おひとのといき〜OHITONOTOIKI〜【合作】

子犬 ページ20

「アハハッ！貴方って本当に惨めね」



高笑いを零しながら僕に向けられた瞳-目-は人間を見るものでは無かった。
まるでごみ捨て場に棄てられた小汚い子犬を見るような、そんな見下した目。

彼女のスラリと長い指が僕の顎に触れる。
お裁縫針をぎゅっと抱き締めたまま膝をついて震える僕にそれを拒むことは出来なかった。
…いや、拒む権利など元から無いのだ。



「でも、そこがまた可愛い…」



耳元で熱を持った声が吐息とともに紡がれる。
それは、情熱の吐息だった。




「あ、ぇ、うぅ……頼むがら゛、離じでぐれぇ」


「あら、泣いちゃったぁ。でもそんな事、私には望んでないように見えるけど。

貴方……私の吐息に興奮してるんでしょ？」





ドキリと心臓が跳ねる。

全身の血液が吸い取られてしまったかのような錯覚が身体中に広がっていき、彼女の色気ある吐息が脳をぐるぐると犯していく。

あ、あ…と情けなく震えた声が口から漏れた。
否定すれば良かったはずなのに、彼女の確信を覆すことはできない気がした。






「ねぇ、そうでしょ？」





…彼女はとことん小悪魔だ。

そう思うには遅すぎたのだろうか。
もっと早く気づいていれば、彼女の事なんて愛さなかっただろうか。

あの吐息に、酔い痺れることなんて無かっただろうか。



僕は涙と鼻水でぐしょぐしょの顔を何度も縦に降った。彼女のあの吐息を、もう一度浴びたかったのだ

吐息と耳くそと僕→←お裁縫針

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