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「裕太さん」
「おはようございます。あれ、これから出勤ですか?」
私が相手の時とは違う、畏まった態度を取る二人に若干の戸惑いを覚える。
まさか組の上司的な人なのだろうか。
そして田中という人の下の名前が樹だということを知った。
「そうだよ。ちょっと用事があって遅めの出勤」
「お疲れ様です」
「てかなにその子、どっちかの彼女って感じじゃなそうだけど。沈められちゃう子?」
沈められる、というのは風俗に沈められるということだろう。
長身の目の前の男の顔は涙でぼやけてよく見えない。
見えたところで別に関係無い。
「そうっす。親の借金のカタに連れてきました」
「へぇ、ちなみにいくらなの」
「元金利息諸々合わせて2億です」
「はあ!?」
樹と呼ばれた男がそう答えて私は思わず叫んでしまった。
そう言えば金額を聞いていなかった。
2億って……
2億ってなに……?
私は自分のものでも無い借金を2億も背負ってしまったというのか。
あまりのショックに足元から崩れてしまい、その場にへたりこんでしまった。
「あらら、知らなかったの?可哀想に。大丈夫だって、こいつらの店は優しいお客さんも多いし、数年で出られるよ」
「この街のNo. 1ホストに慰められるなんてラッキーだな」
慎太郎と呼ばれた人がけらけらと笑っていた。
へたりこんでしまった私の前にしゃがみ込んで、裕太と呼ばれた人は慰めのような言葉をかけてくる。
本格的に溢れ出た涙で前が見えない。どんな顔でそんなその場凌ぎの言葉を言ってくるのか。
普段なら私の気持ちなんて知らないくせに、軽々しく言うなと腹が立つのだろうが、今の私にはそんなエネルギーも無く、アスファルトに涙のシミを作るだけだった。
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ちあき(プロフ) - yk717miraiさん» コメントありがとうございます。私が書いたお話にそこまで感情移入してくださって嬉しいです(〃ω〃) (2019年8月12日 11時) (レス) id: e4fa195aef (このIDを非表示/違反報告)
yk717mirai - 捨てて行った家族にバチが当たればいいのに。幸せになるべからず!! (2019年8月12日 6時) (レス) id: 2f50dbd382 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちあき | 作成日時:2019年8月11日 21時