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「まあ、そういうことだから。取り敢えず行こうか」


呆然と立ちすくむ私の腕を掴んで男は近くにあった黒塗りのセダンの後部座席に押し込んだ。


後部座席には別の男が乗っていて、きっと私が逃げないように見張る監視役なのだろう。


「慎太郎、逃すなよ」


「分かってるよ」


すぐに男が運転席に乗り込み、後部座席の男にそう言うと車は走り出す。




「あの、どこに連れて行かれるんですか」



もう殆ど答えは分かっていたけど、聞くしか無かった。



「俺たちの組が管理してるソープ」


バックミラーで私を見ながら淡々と言う。


まあそうだろうとは思っていたけど、組という言葉でこの人たちの職業を確信した。


「つか処女じゃないよね?アンタみたいな地味な女、結構人気出るんだよ。スレてない感じが良いって。まあ5年すれば出れるんじゃない?」



5年間も?あり得ない。そもそも親の借金でなんで私が。


あまりのことに頭が追いつかないが、理不尽な状況にあるというのだけはハッキリと分かる。


親が借金をして、しかもやばい所から借りて返せなくて、そのカタに私を生贄にして、私はソープで働かせられる?


元号も変わったのに、いつの時代の話だよと他人事のようにツッコミを入れたくなる。


自分のことなのに自分のことじゃないみたいだった。やっぱり脳の処理が追いついていない。



「私、会社で働いてるんですけど」


「事務だっけ?そんな仕事で返済に何年かかるか分からないだろ。それに逃げられても困る」


「急に来なくなったら怪しまれますよ。貴方達も危ないんじゃないですか?」


「俺らにとってこんなこと日常茶飯事なの。そういう処理も慣れてんの。安心して今の仕事は忘れろ」


そういう処理、というのは勝手に退職手続きをするということだろうか。


完全に詰んだ。頭がクラクラして座席に埋もれるように倒れた。


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ちあき(プロフ) - yk717miraiさん» コメントありがとうございます。私が書いたお話にそこまで感情移入してくださって嬉しいです(〃ω〃) (2019年8月12日 11時) (レス) id: e4fa195aef (このIDを非表示/違反報告)
yk717mirai - 捨てて行った家族にバチが当たればいいのに。幸せになるべからず!! (2019年8月12日 6時) (レス) id: 2f50dbd382 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ちあき | 作成日時:2019年8月11日 21時

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