俺とあいつ

今日も仲良く仲違い(1) ページ14

※ラギー視点



最近Aがやたらとため息を吐く。


「そんなにため息ばっかり吐いてたら幸せが逃げるッスよ」


「幸せなんてクソくらえだよ」


教室の机にぐったりと突っ伏しているAはそう言って一段と深く息を吐いた。

どうやらハーツラビュルの規則をことごとく破るAを見過ごせなくなったリドルくんがとうとう荒技に出たらしい。
最近は休憩時間や授業後も関係なく、勉強や規則、寮のイベント準備など、リドルくんを筆頭に厳しい監視役付きでAを再教育している。
その為、俺が授業以外でAと絡むこともかなり減った。

緩みに緩み切ったAを根本から叩き直す計画らしいが、誰よりも自由人であるAがここまで縛られた生活にいつまで耐えられることやら。

当の本人は、自分が世界一不幸だとでも言うように悲しげに瞳を伏せている。
日課のお昼寝まで削られて眠いだけかもしれないが、そんな顔をされるとなんだか俺まで胸が痛んだ。


「規則を破るって言ってもさ、ちょっと遅刻したり、パーティーの準備忘れたりしただけなんだ。あとお茶会で勝手にチェリーパイ食べたり、それから、」


「はいはい、もうわかったから」


よくもまあ次から次へと出てくるものだ。
Aの失敗談が終わりそうになかったので思わず遮ってしまった。


「確かにAのしたことは些細なことかもしれないッスけど、それが寮の規則なら従わないと。それに規律の乱れは寮長の責任になるんだから厳しく取り締まるのも当然。リドルくんも大変ッスね」


Aを甘やかすばかりではなくたまにはきちんと忠告することも必要だ。それはAのためにも。
それにすっかり手を焼いているリドルくんへの同情心というのもあった。
だから今みたいな発言をしたわけだが、それを聞いたAがあまりにも悲しそうな顔をしていたので思わずぎょっとした。
なんというか懐いていた飼い主に裏切られた子猫のような、そんな表情。


「あの、A…？」


「ラギーまでリドルの味方するんだ」


「味方とかそういう話じゃなくて、」


「もしかしてこの間キスしたことまだ怒ってんの？」

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