今日も仲良く挨拶のキス(7) ページ12
＊
「俺、やりますよ。Aがこのまま目ェ覚さないと困るんで」
そう言うとトレイさんに「手間をかけさせて悪い」と謝られた。
俺なんかにここまで気を遣ってくれる人間なんて珍しい。
だが俺自身手間だなんて全く思っていない。
Aが無事に目覚めるならそれでいい。
「い、いくッスよ」
みんなに聞こえているのではないかというぐらい、鼓動の音がうるさい。
長い睫毛。
淡いピンク色の唇。
Aの顔を改めて見ると無駄に意識してしまう。
だけどそんなのは当たり前だ。
今のAは正真正銘の女の子なのだから。
女性特有の甘い匂いがふいに鼻をかすめ、手に汗が滲む。
側ではそんな俺の様子をエースくんとトレイさんが固唾を飲んで見守っている。地獄だ。
だが気を利かせて席を外してくれる様子はない。
俺は静かに深呼吸した。
「…俺にこんなことまでさせるんだから、ちゃんと目ェ覚ましてくださいよ…A」
「…んー」
「！！」
本当に唇が触れるか触れないかのタイミングだった。
なんとAが伸びをしながら目を覚ましたのだ。
「A！！」
「A先輩！！」
驚きのあまり即座に反応できなかったが、それぞれ安堵の声を上げる。
そんな中Aは訳がわからないというようにキョトンとした表情だ。
一気に肩の力が抜けた俺はその場にしゃがみ込んだ。
「ラギー、大丈夫？」
「ほんとに心配したんスよ、もう」
「ごめんね。なんか急に眠くなってさ、気がついたらここで寝てた」
全く、こっちの気も知らないで。
笑えてくるぐらい普段通りのAだ。
姿以外は。
「愛する者のキスでしか目覚めないはずだが…どうやらエースの作った魔法薬は完全ではなかったという訳か」
「なーんだ、心配して損した！」
エースくんはすっかり気が抜けたのか、いつもの調子を取り戻していた。
「愛する者のキス？」
「いやっ、なんでもない！！こっちの話ッスよ…！」
トレイさんの言葉に首を傾げるAに気まずさを感じた俺は話を逸らした。
「ま、なんか大丈夫そうだし俺行きますよ？実験の片付けしなきゃだし。あーメンドクセー」
「エース、随分と余裕な様子だが今回の件はリドルにも報告させてもらうからな」
「えー！！？トレイ先輩それマジで言ってるんスか！？信じてたのにッ！！」
俺たちの存在を忘れたかのように二人はぎゃーぎゃー騒ぎながら出て行った。
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しろ - 今更ですが素敵な小説を発見してしまった…！！もう何度も読み返しています。二人の微妙な距離感がもどかしくて可愛らしい！！ (2022年9月4日 8時) (
レス) @page19 id: 694670944a (このIDを非表示/違反報告)
ゆきな(プロフ) - んふふ…ちゅーで呪いが解けるってﾆﾔﾆﾔしますね！ (2020年6月13日 10時) (レス) id: e7791cc44f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：青井 | 作成日時：2020年4月12日 19時
