1月/意味不明人間へ ページ28
総悟の返信があまりにも早いんでビックリしちゃった。いつも一ヶ月は空けるっていうのに、どうしたの?文通に目覚めた?
それに、貰いに行くってどういうこと?なんだか意味不明なことばっかりでわけわかんなくなっちゃうよ、もう。
こっちは結構な大雪だよ。今年の冬は雪かきが忙しくって困っちゃう。腰が痛いんだけどとうとう歳かなこれ。まだ若いのに困っちゃって、「――おい」
「…っ、え?」
――不意にかけられた声に、思わず肩が跳ねた。目の前の文字列から顔を上げれば見慣れたそいつと目が合って、まばたき。
「どうしたの、総悟」
廊下からこちらを覗き込んでいる総悟に首を傾げた。一方そいつは「どうもこうも」と私の手元に目をやり。
「もう日も暮れるってのに電気もつけずに何かしてやがるアホがいたからつい」
「いくらか言葉が多い!……部屋のお掃除してたら昔の手紙が出てきたの。私がもらった分も一緒にしまってあったから懐かしくて」
手の中に収まる一枚を、愛おしく撫でる。――このときはひたすら不安で、寂しくて、奴が恋しくて。
「――よー」
「っ、そ…!?」
「攫いに来た」
確か、そんなやりとりがあったのもこの手紙を投函してからすぐのことだ。“攫いに来た”そう言いながら差し出された手は、まるでヒーローのそれだった。
私の言葉に得心した様子の総悟は「なるほど」と私の隣へ胡座をかく。手紙へ向けられる視線は懐かしげだ。
「なんつー昔のもん持ち出してんだか」
「思い出の品でしょ、大切にとっとかなきゃ。これも持っていくんだから」
「そりゃ置いてこうなんざ思ってねーけどよ」
――あのとき、手をとった結果。真選組に女中として引き取ってもらって、そいつと恋仲なんてものになって、さらに時間は経って――そして今度、私の名字は沖田になる。……勿論、紆余曲折はあったけれど。
所帯持ちは屯所外に住むという暗黙の了解に従って荷造りを進めている今現在、私のまわりは祝福に満ちていて。
「そういや近藤さんが赤子はまだかって浮き足立ってたぜィ」
「あ、あか……!!?……どうしてそう階段一段飛ばしみたいな発想になるかな、あの人は」
「そんだけ浮かれてるってこったろ」
お互い浮かぶのは苦笑だけれど、滲む幸せも隠しきれなかった。最近は近藤さんだけでなく屯所内全体が浮き足立っている。嬉しいことだ、本当に。
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文 - 何年経っても色褪せなくてついまた読み返してしまいます。ふっと笑えるところもあれば切なくなるところもあって、最後には幸せな気持ちになれて本当に胸がいっぱいになる作品です。 (12月2日 23時) (レス) id: 83faa383a3 (このIDを非表示/違反報告)
リィ(プロフ) - どんな幸せな終わり方だよォォォォォォ!!!!滅多に泣かないはずのボクが号泣するとかァ!!!めっちゃ面白かったです!神作品だぁ… (2022年5月18日 11時) (レス) @page40 id: a9f70234e2 (このIDを非表示/違反報告)
たろ。(プロフ) - 序盤めちゃくちゃニヤニヤしながら見てたけど後半号泣してしまった…最高… (2022年5月15日 0時) (レス) @page40 id: ba071d904f (このIDを非表示/違反報告)
ナナナ(プロフ) - なんですかこの神作品は。。。2時間かけて一気に読んでしまいました。。笑って泣ける、本当に本当に最高の作品でした。ありがとうございました、( ; ; ) (2022年4月26日 2時) (レス) @page40 id: 6431d8432b (このIDを非表示/違反報告)
なかむら(プロフ) - ぺさん» 遅レスすみません汗 書簡集、恋文の技術です!!森見さん大好きで……!同士の方と巡り合えてとても嬉しいです!もちろんこちらの夢小説はあちらの足元にも及びませんが(笑)、楽しんで頂けていたら幸いです! (2021年2月25日 21時) (レス) id: cefa07e7cb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:中村 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/nakamura_/
作成日時:2017年3月4日 15時