祝いの日 ページ36
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「――ふたりとも゛、本当に゛良かったなァ……おべでどう……!!」
――向けられた、涙と鼻水とで大洪水になってしまっているその顔に、私と右隣のそいつの顔が少々引きつるのがわかった。
「近藤さん、ちっと飲みすぎですぜ。祝って貰えるのはありがてェがソレ今日15回目」
「いいじゃねェかよォ、今日くらい。今まで生きてきてこんなにめでてェ日はねェ!!」
そりゃそうですが、とそいつ…総悟が呆れたように笑う。――本日は、私たちの祝言だったのだ。
……まぁでも、祝言といっても教会で挙式だとか大勢招いて豪勢にというわけではない。ただ朝から総悟は紋付袴、私も白無垢を着て、隊士たちと数人のお客さんに料理なんかを振舞って。
そんな、こじんまりしていながらも幸せな儀礼を終えたところなのだ。そして昼過ぎからは私たちも普段着に着替え、しかし収まらないお祝いムードに押されて二次会が始まり、
「近藤さん、お酒もほどほどにしとかないと明日に響きますよ」
普段のストレスやらなにやらを発散するように飲めや歌えや騒げや祝えやと盛り上がりに盛り上がった祝宴は、既に21時を回ろうとしている今現在も続いているのだった。
近藤さんなんて昼から大分とばしていたからかなり酔いも回っていることだろう。そう促せば「新婦さんに言われちゃ仕方ねェか…」とコップを置いてくれる。
「…新郎の言葉も聞いて欲しいもんでィ」
「まぁまぁ」
再び宴のざわめきの中へと戻っていった近藤さんを微笑んで見つめつつ返した。軽くあしらわれた総悟は少し不機嫌そうで、ちょっとだけ面白い。
私は中々見られないその表情をからかうように、右隣を見上げた…んだけれども。
「総悟って近藤さんのことになると子供だよね」
「ガキにガキ認定たァ頂けねェ。一昨日の死闘忘れたとは言わせねーぜ、ベッドの上でどんだけ、」
「バカ!!」
やっぱりいつまで経ったって上手は総悟の方らしかった。というかこんな日にこのタイミングでそんなこと言ってくるってどういう神経をしているんだ。私はこの先どんな新婚生活を送ることになるんだ。
私が抱いた一抹の不安を知ってか知らずか、不意に総悟は腰を上げた。どうかしたのか問うてみれば「ちっと風にでも当たらねーか」と。
「酔い覚ましでィ、付き合いやがれ」
「酔ってたの?もちろんいいけど」
総悟が酔うことなんてあるんだなぁとどこか感心しつつ、私は喧騒の中から静かに抜け出したのだった。
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文 - 何年経っても色褪せなくてついまた読み返してしまいます。ふっと笑えるところもあれば切なくなるところもあって、最後には幸せな気持ちになれて本当に胸がいっぱいになる作品です。 (12月2日 23時) (レス) id: 83faa383a3 (このIDを非表示/違反報告)
リィ(プロフ) - どんな幸せな終わり方だよォォォォォォ!!!!滅多に泣かないはずのボクが号泣するとかァ!!!めっちゃ面白かったです!神作品だぁ… (2022年5月18日 11時) (レス) @page40 id: a9f70234e2 (このIDを非表示/違反報告)
たろ。(プロフ) - 序盤めちゃくちゃニヤニヤしながら見てたけど後半号泣してしまった…最高… (2022年5月15日 0時) (レス) @page40 id: ba071d904f (このIDを非表示/違反報告)
ナナナ(プロフ) - なんですかこの神作品は。。。2時間かけて一気に読んでしまいました。。笑って泣ける、本当に本当に最高の作品でした。ありがとうございました、( ; ; ) (2022年4月26日 2時) (レス) @page40 id: 6431d8432b (このIDを非表示/違反報告)
なかむら(プロフ) - ぺさん» 遅レスすみません汗 書簡集、恋文の技術です!!森見さん大好きで……!同士の方と巡り合えてとても嬉しいです!もちろんこちらの夢小説はあちらの足元にも及びませんが(笑)、楽しんで頂けていたら幸いです! (2021年2月25日 21時) (レス) id: cefa07e7cb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:中村 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/nakamura_/
作成日時:2017年3月4日 15時