犬と紙 ページ21
(……もしこのままデパートの中へ踏み込んだとして、)
どういう道を辿ればいいのか少し考えてみる。…確か三階まで上がって左に曲がって……、…あれ、四階だっけ?左に曲がったら次は――と、そのあたりで自身の限界を知った。
苦笑いで銀さんを見上げ、しかしそろりと視線をそらす。
「……私にはまだ早かったです」
「わかりゃいい」
「案外考えがねーのな」とかなんとか言っている銀さんに少々むっとしながら、さて掴まれている右腕をどうしたものかと考えていると――突如背後に影がさした。
首を傾げながら後ろを振り向こうとすれば銀さんが「…オイ」とその動きを阻止する。「……振り向かねーほうがいいぞ」…どうしてだろう、顔が引きつっていた。
「……銀さん?」
その意図がわからなくて、ただ彼の顔を見上げていれば――「オイコラ」なんてこの場を切り裂く鋭い声があって。……私は、思わず固まった。
「――見覚えのある顔だと思えば…、…万事屋、天下の公道でナンパたァ覚悟は出来てんだろうな」
……少々機嫌が悪そうで、しかしお堅いその声。――それはとてもとても聞き覚えのあるものであり。
「……あー、…とりあえず誰がナンパだコノヤロー。大人しく犬小屋にでも篭ってろ」
「誰が犬だ菌類に言われたかねーんだよ!ほぼ紙くずだろーが!!」
「何勝手に人様の尊い命奪ってゴミ認定してんだよぶっ殺すぞ」
(――土方さん、だ…。)
…初対面のときの返答通り心底嫌そうな顔をする銀さんと言葉を交わすその彼――土方さん。どうにもこの状況をナンパと認めたようで、さすが警察というか助けに入ってくれたらしい。……ありがたいけど、ありがたくない。
混乱を極める中、銀さんの“どーすんだ”と問われているかのような視線がこちらへ向いて私はひたすら考えた。走って逃げればきっと迷って帰れなくなるだろうし、しかし銀さんと土方さんに板挟みというこの状況は中々に……中々だ。
そうして私が迷っているうち、頭上の諍いは悪化したようだった。両者一歩も引かぬ中、とうとう色々勘違いしている土方さんが「ナンパはほぼ誘拐だ、諦めろ。調書取るぞ」と。――いや、それはまずい。流石にまずい!
一時の戸惑いで折角の依頼相手へ冤罪を投げつけるのはいけない。「――あの!」私は意を決して口を開いた。
「――その人知り合いです、別に変なことされそうになってたわけじゃないです」
「………なんで裏声?」
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中村(平日浮上なし)(プロフ) - 皆様コメントありがとうございます!!お陰様で一巻完結とさせていただきましたヽ(*´∀`)ノ亀更新にお付き合い頂きありがとうございます!!嬉しいお言葉も沢山頂けて嬉しい限りです…!! 次巻では多少進展させられると思うので…よかったらまたよろしくお願いします!(^^ (2017年2月11日 21時) (レス) id: c9af2bf87c (このIDを非表示/違反報告)
かのん(プロフ) - お疲れさまでした!次巻も拝見させて頂きます! (2017年2月11日 20時) (レス) id: 20b4c6b7f5 (このIDを非表示/違反報告)
主任(プロフ) - 中村さんの作品いつも楽しみに見させていただいております(^_^)今回も最高でございます…また生きる糧を頂戴致します(^_^) (2017年2月11日 19時) (レス) id: 55077c071d (このIDを非表示/違反報告)
唯月 - 凄く面白いです!更新は大変だと思いますが、これからも頑張って下さい!応援しています! (2017年1月28日 22時) (レス) id: 9cd5d172ad (このIDを非表示/違反報告)
ユキ(プロフ) - 私も田舎の方に住んでるので何かと共感できる部分が多くて嬉しいですw銀さんが用心棒……心強いですね。これからの展開が楽しみです。 (2017年1月28日 22時) (レス) id: b4895c0cf1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:中村 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/nakamura_/
作成日時:2017年1月4日 20時