訳:三回殺す side銀さん ページ3
【銀さんside】
―――それは、とある水曜日の昼下がりのこと。
今日も今日とて万事屋の社長椅子にてジャンプを読みふけっていた俺は、ちらと掛け時計を見上げ時間を確認していた。……それというのも。
(…あと十分か。)
――そう、あと十分で来客があるからである。毎日閑古鳥を飼い慣らす万事屋にその依頼の電話が入ったのはつい二日ほど前のことだ。
さして珍しいことでもねーが今月どころか先々々月の家賃すら払えておらず、ババアには現世を前前前世に位置づけてやろうかと脅されていたような状態の万事屋にとってそれは救世主に違いなく。
どういう事情があるのかしらねーが『依頼のときはできる限り少人数にしてほしい』という依頼主の要求に従い現在俺のみがここで待ちぼうけているというわけなのだ。
電話口だけで判断すりゃァ若い女のように思えたが、一体どんなワケありもんだ、そんなことを考えつつ俺がまたジャンプのページを捲っていると――ピンポーン。
(……来たか。)
例のワケあり依頼人(仮)とやらが。
「――ごめんくださーい」という先日も聞いた女の声に「どーぞ」と特に体勢も変えぬまま促せば控えめに玄関の戸が開かれたようで。
…この声からすると美人か、いやでも最近声詐欺も増えてっしな、醜女だなこりゃ。くだらない考え事は一旦脇に置いておき、
「よっこらせっ…と」
俺もようやく椅子から立ち上がった。ひとつ大きな伸びをし腰を下ろす先は社長椅子ではなくソファである。――そして俺がソファに腰掛けた頃、居間の戸から依頼主がその姿を現した。…のだが。
(……マジでか。)
――現れたのは、器量よしに分類されるだろう女。櫛通りの良さそうな薄栗の髪は右耳の下で一つに結ばれている。
一時動きを止めた俺をそいつは戸惑うように見つめ、一言。
「――えっと、…万事屋さん、ですか?」
「…………あ、万事屋デスネ」
……少々空いてしまった間はその女が予想外に正規業者だったことが原因である。昨今稀にみるイメージの合致だ。…つーかんなこたァ後回しとして。
(…そういやワケあり疑惑ありだったか。)
上玉だってのにワケありたァ。正直嫌な予感しかしねェがこれも金のためと思えば苦ではない。…そもそもかぶき町なんざワケありの塊みてーなもんだし。
よし大したことねーなと腹を決め、俺はいつぶりかの依頼に向き合うこととしたのだった。
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中村(平日浮上なし)(プロフ) - 皆様コメントありがとうございます!!お陰様で一巻完結とさせていただきましたヽ(*´∀`)ノ亀更新にお付き合い頂きありがとうございます!!嬉しいお言葉も沢山頂けて嬉しい限りです…!! 次巻では多少進展させられると思うので…よかったらまたよろしくお願いします!(^^ (2017年2月11日 21時) (レス) id: c9af2bf87c (このIDを非表示/違反報告)
かのん(プロフ) - お疲れさまでした!次巻も拝見させて頂きます! (2017年2月11日 20時) (レス) id: 20b4c6b7f5 (このIDを非表示/違反報告)
主任(プロフ) - 中村さんの作品いつも楽しみに見させていただいております(^_^)今回も最高でございます…また生きる糧を頂戴致します(^_^) (2017年2月11日 19時) (レス) id: 55077c071d (このIDを非表示/違反報告)
唯月 - 凄く面白いです!更新は大変だと思いますが、これからも頑張って下さい!応援しています! (2017年1月28日 22時) (レス) id: 9cd5d172ad (このIDを非表示/違反報告)
ユキ(プロフ) - 私も田舎の方に住んでるので何かと共感できる部分が多くて嬉しいですw銀さんが用心棒……心強いですね。これからの展開が楽しみです。 (2017年1月28日 22時) (レス) id: b4895c0cf1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:中村 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/nakamura_/
作成日時:2017年1月4日 20時