人見知り的恐怖 ページ9
「――おいこら、逃げるな!よくもやってくれたな!」
「変なことはしませんから!身一つ貸してもらえればそれでいいですから!」
――いや、むり、とてもむり!!と内心で叫んで屋敷の中を疾走する今現在。私の疲弊度は既に120を超していた。
血迷いの上に覚悟を決めて男にバケツの水をぶっかけたのはつい数分前の出来事である。その後私はずっと二人に追いかけられているわけだけれど。
(…せ、精神的疲弊と、肉体的疲弊が、)
なにしろ背後ではほぼ知らない男ふたりがこちらへ視線と怒気を向けているのだ。その上走り通し。……人見知りのインドア派には辛すぎる状況で。
この屋敷が広いおかげでなんとか逃げ延びることができてはいるけど――…既に迷ってしまっていてさらに体力の限界も見えているから救いようがない。
先程よりも近くなってきている背後の気配とゼェゼェ煩い自分の吐息に、コレはもうダメか、と諦めかけていると、……そんな気持ちを何かに見透かされたのか、足がもつれてしまって。
「――う、わ、」
衝撃に備えて目を瞑れば、想像よりも少々小さな痛みが体を襲った。畳に倒れ込んだせいか、頬がヒリヒリとするほか外傷もないらしい。……でもそれにほっとしたのも束の間。
「ったく、すばしっこい嬢ちゃんだことで」
「漸く追いつきましたよ」
体勢を立て直そうと上半身を起こせば、それはそれは悪そうな顔をしてこちらを見下ろす男ふたりの姿が目に映った。――つまるところ、
(………目が!)
知らない人と、目が合ってしまった!!
一気に精神がえぐられるのを感じながら内心吐血する。即座に視線を逸らした先で畳のイグサを数えた。…一本二本と心を静め――八本目に、入ったあたり。
「……ダンマリかァ?」
こちらを挑発するように声がかけられた。聞き慣れぬそれに肩が跳ねる。
言葉を返すことも反撃することもできず、ただただイグサだけを見つめて。……誰か救いの手、と両の拳を握り締めて思い浮かべるのはどうしてか沖田さんの顔だった。…なぜだかはしらないけど。
「――エット、」
兎角口を開くも、極度の緊張と疲労から右手が震える。……それを抑え込むように肩を窄めた、そのとき。
「――…おいコラ、そこの引きこもり予備軍」
「……え、」
「なに俺の目のねーとこでんな面白れェ顔してやがんでィ」
――ここにあるはずのない声が、私の震えなんていとも簡単にかっ攫って行った。
そこかよ side沖田さん→←言い訳がましい side沖田さん
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中村(受験生)(プロフ) - ことにゃ@時間ほちいさん» 返信が遅くなってすみません…!(;´д`)23ページ、直させていただきました!あまりにもアホな間違え方でもしご指摘頂けなかったら…と考えると恐ろしいです汗 本当にありがとうございます!!また何かやらかしてましたら、お知らせ頂けると嬉しいです! (2018年1月27日 19時) (レス) id: cd501a87b6 (このIDを非表示/違反報告)
ことにゃ@時間ほちい(プロフ) - はじめまして。以前から楽しくにやにやしつつ読ませて頂いています。ところで、23ページの驚いて背中を話してっていう文、離して、ではないでしょうか。 (2017年12月9日 18時) (レス) id: b97928b5e0 (このIDを非表示/違反報告)
鳥夢(プロフ) - び、びっくりしました!ここでこの作品が簡潔なのかと思いました!wこれからもゆっくりでいいので更新頑張ってください! (2016年12月18日 21時) (レス) id: 068b742e71 (このIDを非表示/違反報告)
中村(平日浮上なし)(プロフ) - 成瀬さん» コメントありがとうございます!中々番外編を書く時間が作れず申し訳ない限りなのですが、考えてはいますので気長に待ってもらえるととても嬉しいです…!ネタがぽんぽん浮かんでくれればいいんですが…笑 リクエストありがとうございました! (2016年12月18日 21時) (レス) id: c9af2bf87c (このIDを非表示/違反報告)
成瀬 - 今更なリクエスト何ですが猫かぶりの番外編を書いてほしいです (2016年12月16日 23時) (レス) id: 7fba721a26 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:中村 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/nakamura_/
作成日時:2016年11月27日 1時