don'tとcan't ページ46
「――あ、見てみて!アレって真選組の特集番組じゃない?」
「ほんとじゃん。録画してきたよー私!」
「目の保養になるもんねえ」
「そうそう」
………背後に現れたらしき数人の声に、笑いを零していた数秒前とは打って変わり私は息をつまらせた。……前方にはガラス、後方には知らない人――四面楚歌とはこのことで。
(…とりあえず絶対にふりむかない。)
天パの財布へ力を込めながらそう堅く決意した。ふりむかないではなくふりむけないだけじゃないのかとかそういうのは野暮である。
可愛らしく声を上げる女の子集団が早くどこかへ去っていきますようにと切に願うけど、画面に沖田さんやら整った顔の隊士の人やらが映っている限りその願いは叶わないようであり。
「――みんなはさ、誰が好き?」
…そうこうしているうちに品評会まで始まってしまう始末だ。う、と息がまた詰まる。
この寒さだというのににじみ出る冷や汗を押さえ込もうと私が奮闘する後ろでは、彼女らの興奮が白い息と共に吐き出されていて。
「――私はあの人!!絶対に副長の人!」
「私はイケメンなら誰でもー」
「擦れてんだからもう。あたしはもう、迷う余地なく沖田総悟!」
「おー!私もだよぉー!」
いいよねぇ、沖田総悟。強いしカッコイイし、破壊魔って言っても優しそうだし。――そんな言葉たちに、一瞬冷や汗が引っ込んだ。
(…………沖田さんが、優しそう。)
だめだ、これはだめだ。このままここにいては確実に吹き出してしまう。そんな人目を集めそうなこと絶対にしたくない。
この場からの脱出を図る私はムズムズする唇を一文字に結び、肩を強ばらせながら左右を窺った。すると、右側に抜け道が十数センチ。
それを見つけるやいなや「チョットスミマセン」と蚊の鳴くような声で発し滑り込んだ。彼女たちが液晶相手に盛り上がった隙をついて、なんとか注目を浴びることなく脱出成功を成し遂げられ。
(――たす、かった。)
安心すると同時に笑みが漏れた。そうか巷で沖田さんはあんな風な印象を抱かれているのか、と。爆笑ものである。
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中村(受験生)(プロフ) - ことにゃ@時間ほちいさん» 返信が遅くなってすみません…!(;´д`)23ページ、直させていただきました!あまりにもアホな間違え方でもしご指摘頂けなかったら…と考えると恐ろしいです汗 本当にありがとうございます!!また何かやらかしてましたら、お知らせ頂けると嬉しいです! (2018年1月27日 19時) (レス) id: cd501a87b6 (このIDを非表示/違反報告)
ことにゃ@時間ほちい(プロフ) - はじめまして。以前から楽しくにやにやしつつ読ませて頂いています。ところで、23ページの驚いて背中を話してっていう文、離して、ではないでしょうか。 (2017年12月9日 18時) (レス) id: b97928b5e0 (このIDを非表示/違反報告)
鳥夢(プロフ) - び、びっくりしました!ここでこの作品が簡潔なのかと思いました!wこれからもゆっくりでいいので更新頑張ってください! (2016年12月18日 21時) (レス) id: 068b742e71 (このIDを非表示/違反報告)
中村(平日浮上なし)(プロフ) - 成瀬さん» コメントありがとうございます!中々番外編を書く時間が作れず申し訳ない限りなのですが、考えてはいますので気長に待ってもらえるととても嬉しいです…!ネタがぽんぽん浮かんでくれればいいんですが…笑 リクエストありがとうございました! (2016年12月18日 21時) (レス) id: c9af2bf87c (このIDを非表示/違反報告)
成瀬 - 今更なリクエスト何ですが猫かぶりの番外編を書いてほしいです (2016年12月16日 23時) (レス) id: 7fba721a26 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:中村 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/nakamura_/
作成日時:2016年11月27日 1時