小心者と面の皮 ページ33
【沖田さんside】
――ざわざわと騒がしい大通り。休日ということもあり人で溢れかえったそこにて、ぶらりぶらりと歩を進めているのは俺と某人見知りであった。
どうしてこんなことになっているかというと答えは簡単、その女が浅はかにも俺に借りを作ったからだ。こちらとしては思う存分その反応を愉しみながらいじめ抜いてやろうと考えていたのだが。
「……オイ。…なんで一列歩行?」
この街歩きもどきを開始させてから早数分、ずっと気になっていたそれを尋ねてみれば真後ろのそいつはびくりと肩をはねさせた。…そう、どうしてか俺たちは縦一列で歩いているのである。
ちらりと自分の背後を伺ってみると、そいつが強ばった顔で斜め下を見つめており。
「…ムリ。知らない人がいっぱいいる。こんなに大量の視線に生身で晒されたら死ぬ」
「服着てんだろ」
「そんな古典的なボケはお呼びじゃない」
意地悪おまわりでも盾くらいにはなる、とまた背中にひっつくその女。……まったく小心者なのか図太てェのかわからない。
普通は真選組一番隊隊長なんつーもんぶら下げた野郎に近づくことのほうが恐れられて然るべきだってのに、無害な視線の方が恐ろしいたァ何事か。とんだ変わり者だ。
「折角挙動不審を観察してやろうと思ったのにこれじゃできねーじゃねーか」とぼやいてみれば「それも狙いではある」とかなんとか。
「てめー借り返す気があるなら一列歩行やめやがれ、んでキョドってろ」
「借りなら一緒に出かけた時点でもう返した。沖田さんは私を連れ歩けることに感謝してて」
「連れ歩けてねーよ、兵隊の訓練でもしてる気分でィ」
俺の言葉も「うるさい」と4文字でぶった切ったそいつは「それよりご飯食べよう、沖田さん。お腹すいた」などと。
「……よくその分厚い面の皮の上にさらに人見知りコーティングできるもんだなてめー」
「ポーカーフェイス外したら何から何まで真っ黒な人に言われたくない」
見知らぬ第三者に怯えながらも、飛んでくる罵倒は鮮やかなものだった。いや感心できるとこじゃねーが。
そういや俺も飯まだだったとかんなことを考えながらひとつため息をつき。
「…ったく、金はあとで旦那に請求すんぞ」
人見知りの下に隠れたその本性を知っているという一点ですれ違う人々に原因不明の優越感を感じつつ、俺はそいつに折れてやることとしたのであった。
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中村(平日低浮上)(プロフ) - 皆様コメントありがとうございます!!お陰様で一巻完結とさせていただきましたー!次は多少進展する、はず、です!よろしければ続編もお付き合いください(´∀`*) (2016年11月27日 1時) (レス) id: c9af2bf87c (このIDを非表示/違反報告)
レイチェル(プロフ) - 1巻完結おめでとうございます!! 続編お待ちしていますッ><// (2016年11月27日 1時) (レス) id: ee46f2da27 (このIDを非表示/違反報告)
アルハ(プロフ) - 中村さんの作品、どれも楽しく読ませて頂いています!!この作品ももう神作品・・・!!!これからも応援しています!続編待ってます! (2016年11月27日 0時) (レス) id: 5e4beefb64 (このIDを非表示/違反報告)
ましろ(仮)(プロフ) - わあああああ!中村さんの作品はどれも面白いですね…!!私も中村さんのようになれるよう頑張ります( ˘ω˘ )小説もテストも、応援してます!\( 'ω')/ (2016年11月21日 15時) (レス) id: ad846d9b2e (このIDを非表示/違反報告)
朋花 - はじめまして!こちらの小説読ませていただいています。とても面白くて、更新されるのを心待ちにしてます。期末テスト、頑張ってください!応援してます! (2016年11月20日 16時) (レス) id: 9203abc5a0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:中村 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/nakamura_/
作成日時:2016年11月13日 0時