カランコロンと、 ページ25
「――……沖田さんって本当無意味に嫌な奴だよね。謎」
「そりゃどーも」
ビニール傘の下へ入れてもらって、数分。急ぎ足で傘を構えながら目的地へ向かって行くらしい通行人に反し私たちはとぼとぼ足を進めていた。
下駄が地面と接触するたびに飛び散る水滴を、なんともなしに見つめていたら。
「俺から言わせりゃてめーの方が謎だがな」
「…謎?」
「生態が謎」
生態が謎とは一体どういうことだ。私はいたって普通の人間である。
大人用の傘一本というのは中々大きいと思っていたけど、二人で使うとなれば話は違ってくる。思いの外小さいそれの下、沖田さんの肩が私のそれと微かに触れていた。――そんな距離の中、ぽつりぽつりと言葉を交わして。
「……ありがと」
一旦会話が止んだ頃、落とした言葉はそれだった。雨音にかき消されそうなそれが彼へ届いたかは微妙だけれど、「気持ち悪りィ」との声を聞く限りきっと受け取ってもらえたんだろう。
――カランコロンと雨の日でも変わらぬ下駄の音を響かせ始めて、暫く。…ほんの数メートル先に見慣れた我が家が現れて。
「ここだな」
「うん」
階段の傍で足を止めた沖田さんは「んじゃ」と踵を返す。私と触れ合っていなかった方の肩が少しだけ濡れていたのに気づいてしまったのは、置いておき。
…正直、少しだけ迷った。でもあたりに人目がなかったせいか、雨音が激しかったせいか――気づけば、私の口は開いていた。
「――沖田、さん!」
水の糸に阻まれてその姿が消える前に。雨音に、阻まれる前に。少しの焦燥感から大きくなった声は彼の足をしかと止めた。
ゆっくり、いつも通り気だるげに振り返った沖田さんは視線で私を促しているようで、無数の水越しに私もそれを見返す。そして。
「…――沖田さん、ばいばい!…また、ね」
――ぎこちなく、声を発し。ぎこちなく、右手をひらひら動かし。そこへ慣れない笑顔も投入してみると、ビニール傘の下の彼が吹き出したようだった。
「…ロボットかてめーは。一体何笑いでィそりゃ」
面白がるように発された雨のせいで聞き取りづらい言葉に、自然と眉間に皺が寄る。途端に自分の行動の恥ずかしさが湧いてきてしまい。
「……しらない。…それじゃ!」
私は逃げ込むように、万事屋への階段を駆け上がったのだった。
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中村(平日低浮上)(プロフ) - 皆様コメントありがとうございます!!お陰様で一巻完結とさせていただきましたー!次は多少進展する、はず、です!よろしければ続編もお付き合いください(´∀`*) (2016年11月27日 1時) (レス) id: c9af2bf87c (このIDを非表示/違反報告)
レイチェル(プロフ) - 1巻完結おめでとうございます!! 続編お待ちしていますッ><// (2016年11月27日 1時) (レス) id: ee46f2da27 (このIDを非表示/違反報告)
アルハ(プロフ) - 中村さんの作品、どれも楽しく読ませて頂いています!!この作品ももう神作品・・・!!!これからも応援しています!続編待ってます! (2016年11月27日 0時) (レス) id: 5e4beefb64 (このIDを非表示/違反報告)
ましろ(仮)(プロフ) - わあああああ!中村さんの作品はどれも面白いですね…!!私も中村さんのようになれるよう頑張ります( ˘ω˘ )小説もテストも、応援してます!\( 'ω')/ (2016年11月21日 15時) (レス) id: ad846d9b2e (このIDを非表示/違反報告)
朋花 - はじめまして!こちらの小説読ませていただいています。とても面白くて、更新されるのを心待ちにしてます。期末テスト、頑張ってください!応援してます! (2016年11月20日 16時) (レス) id: 9203abc5a0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:中村 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/nakamura_/
作成日時:2016年11月13日 0時