水の出処 ページ23
(……“面白い”。)
私はやはり、むすっとした。彼からそう形容されるのは幾度目だろうか。…面白くなんかないはず、だ。多分。沖田さんのばかやろうめ。――でも、だけど、……そんな不機嫌の裏側では。
(…“おもしろい”、なんて。)
――沖田さんに会うまで言われたことなかった、とか。
今までにも私と関わりを持とうとしてくれた人がいなかったわけではない。…ただ彼らは皆、私の人見知りガードにやられてしまったから。
万事屋の面々はまず住む家が同じだったり仕事が同じだったりしたから例外として――なんでもない他人が、こんなに根気強く関わってくれたのは初めてなのである。…いいことなのかはわからないけど。
……そう考えると沖田さんはもしかしたら貴重な存在なのかもしれない。下手したら銀髪メガネチャイナ服に次ぐレベルで。…いや、実を言うとそのあたりが私の交友関係の全てなんだけど。
嬉しいようなどこか癪に障るような感覚を抱えながら、沖田さんを見上げれば。
「………あれ、」
――頬に伝った、水滴。……冷たいそれに驚きはしたけど、どうにも出処は私の目ではないようで。
「…雨?」
「らしいな」
ぽつりぽつりとベンチを斑点模様にしていくそれをぼんやり見つめた。公園、人が捌けるかな。…そんなことを考えていたら。
「――おいこら、引きこもり予備軍」
「心当たりがない」
「人見知りコミュ障」
「…………なに?」
そっちは心当たりあんのか、との声を聞き流しつつ視線で続きを促す。雨は弱いといってもやはり雨であるようで、沖田さんの隊服に水滴が目立っていた。
彼の肩のあたりに落ちたそれが、ツゥと伝っていくのを目で追っていれば、「傘は」と。
「ない」
「雨強くなんぞ」
「ないものは仕方ない」
沖田さんだってないくせにと文句をたれると「コンビニ行きゃ売ってる」なんて。経済的余裕とコミュニケーション能力を持ち合わせた人間にしか発せない言葉である。つまり私には無理だ。
公務員め、ばかやろう。そう心の中で吐き捨てながら、私は少々閃いた。しっとりと湿ってきてしまった髪の毛をひと束耳にかけつつ、
「沖田さん沖田さん」
「どーした」
「…傘、買って」
「……あ?」
雨足は、強くなり始めていた。
1514人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「銀魂」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
中村(平日低浮上)(プロフ) - 皆様コメントありがとうございます!!お陰様で一巻完結とさせていただきましたー!次は多少進展する、はず、です!よろしければ続編もお付き合いください(´∀`*) (2016年11月27日 1時) (レス) id: c9af2bf87c (このIDを非表示/違反報告)
レイチェル(プロフ) - 1巻完結おめでとうございます!! 続編お待ちしていますッ><// (2016年11月27日 1時) (レス) id: ee46f2da27 (このIDを非表示/違反報告)
アルハ(プロフ) - 中村さんの作品、どれも楽しく読ませて頂いています!!この作品ももう神作品・・・!!!これからも応援しています!続編待ってます! (2016年11月27日 0時) (レス) id: 5e4beefb64 (このIDを非表示/違反報告)
ましろ(仮)(プロフ) - わあああああ!中村さんの作品はどれも面白いですね…!!私も中村さんのようになれるよう頑張ります( ˘ω˘ )小説もテストも、応援してます!\( 'ω')/ (2016年11月21日 15時) (レス) id: ad846d9b2e (このIDを非表示/違反報告)
朋花 - はじめまして!こちらの小説読ませていただいています。とても面白くて、更新されるのを心待ちにしてます。期末テスト、頑張ってください!応援してます! (2016年11月20日 16時) (レス) id: 9203abc5a0 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:中村 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/nakamura_/
作成日時:2016年11月13日 0時