レベルアップ ページ13
「――はい、ごま一つとみたらし一つ。
2人ともたまに来てくれるけど、知り合いだったのねぇ」
――不本意ながらそいつと長椅子に並んで無言を保つこと数分、ニコニコしながらお盆を抱えた先程の女性が厨房の方から現れた。
会釈と共にごま団子を受け取って、苦笑い。
実を言うとまだそいつがここへ現れたのが偶然なのか疑っていたのだけども、それを聞く限り本当らしい。なんということだ。…というか。
「2人はお友達?」
……こんなところに座っていたから知り合いだと思われたのか、不覚にも投げられたそんな言葉。
(…お友達?)
……いやいや、ないない。最近漸く会話が成り立つようになってきた程度だしそもそも私こいつの名前も知らないし。
だがしかし、少し馴染んだ店とはいえこの私が即座に誤解を解くような言葉を返せるはずもなかった。せめてとただただ曖昧に笑う。
一方で、左隣のそいつはというと。
「――んなとこでィ。チョーナカヨシ」
「いいわねぇ、素敵。……あ、おばさんは退散しなくちゃかしら」
…交わされた訳の分からないやり取りと、女性から向けられる含みのある視線。
じゃぁあとは若いおふたりで、なんて言いながら彼女は奥の方へ下がっていってしまい。…いやはや、
「……あの」
「どうしたコミュ障」
「私たちいつの間にチョーナカヨクなったの」
睨みつければ「気づけば他人だったのが大親友になってんのが人間だ」とかなんとか。どうして友達からランクアップしている。
しらけた視線を向けつつ「願い下げる」と団子を齧った。無論一玉ずつではなく3分の1玉ずつである、貧乏性をなめちゃいけない。
仏頂面の私を横目でチラリと視界におさめたらしきそいつはなんだか上機嫌そうにみたらしを口に運んでいて。
「……なにかおもしろいことでも?」
「いやァ、万事屋も面白ェもん隠し持ってやがったと思ってねィ」
「心当たりがない」
「てめーだよ」
つくづく私の不機嫌を加速させる男である。絶対もう口開かない、と決意して団子をもぐもぐやっていれば――…不意に店内に吹き込んだ、外の風。
「―――…やっと見つけたぞ、総悟」
視線をそちらへ向けると、黒髪の男が暖簾から顔を覗かせ鬼の形相で私の隣を睨みつけていた。
……さて、ここで重要なことが一つある。今入ってきた男の顔に私は見覚えがない。――つまり。
(――知らない人!!)
体が動いたのは条件反射の自己防衛だった。
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中村(平日低浮上)(プロフ) - 皆様コメントありがとうございます!!お陰様で一巻完結とさせていただきましたー!次は多少進展する、はず、です!よろしければ続編もお付き合いください(´∀`*) (2016年11月27日 1時) (レス) id: c9af2bf87c (このIDを非表示/違反報告)
レイチェル(プロフ) - 1巻完結おめでとうございます!! 続編お待ちしていますッ><// (2016年11月27日 1時) (レス) id: ee46f2da27 (このIDを非表示/違反報告)
アルハ(プロフ) - 中村さんの作品、どれも楽しく読ませて頂いています!!この作品ももう神作品・・・!!!これからも応援しています!続編待ってます! (2016年11月27日 0時) (レス) id: 5e4beefb64 (このIDを非表示/違反報告)
ましろ(仮)(プロフ) - わあああああ!中村さんの作品はどれも面白いですね…!!私も中村さんのようになれるよう頑張ります( ˘ω˘ )小説もテストも、応援してます!\( 'ω')/ (2016年11月21日 15時) (レス) id: ad846d9b2e (このIDを非表示/違反報告)
朋花 - はじめまして!こちらの小説読ませていただいています。とても面白くて、更新されるのを心待ちにしてます。期末テスト、頑張ってください!応援してます! (2016年11月20日 16時) (レス) id: 9203abc5a0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:中村 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/nakamura_/
作成日時:2016年11月13日 0時