寄り添って ページ9
様々な想いをため息として昇華させ、あたしはもう諦めた。土方さんを窺ってみれば彼も彼でこめかみに手を当てている。
チャイナ娘にはお年玉を渡したことだし、そろそろいいだろう。「それじゃぁあたしたちはここらへんで」なんて踵を返した。少々早足で道をゆき、万事屋一行の視界から逃れる。
――――……そうして、ようやく境内からの脱出に成功したあたりで。「ったく疲れる連中だな」と土方さんの声がこちらに向けられた。
「……ほんとにそうですね。…………おかしな勘違いもしてるし」
「まだ顔赤けェぞ」
「寒いからです!!」
ムキになって言い張るあたしを彼が笑う。その表情に顔の赤みも動揺も引いていって、ただ和やかなきもちだけが残った。
帰路についたあたしたちの上には、はらりはらりと粉雪が舞い降りて。
「――雪だな」
「ほんとう、綺麗。……明けちゃったんですね、年」
去年は色々あったなー、と静かに独りごつ。右手を裏返してみれば手のひらの上で白い結晶が消えていった。――それは、綺麗だけれど。
(……消えないで、もらいたい。)
色々なことがあった昨日までのその年を思い返す。綺麗さの欠片もないそれらは、忘れ去るには惜しいから――綺麗な雪のように、消えてしまいませんように。
少し遅かったかもしれないけれど、もう大分後ろになってしまった神社に向かって内心で手を合わせた。御利益、あるはず。
無言のうちに上機嫌となったあたしを土方さんが不思議そうに、でも少し面白がるように見つめていた。「どうしました?」なんて見上げれば「なんでも」と。
「……まぁいいですけどね。…――今日は、連れ出してもらって良かったです。ありがとうございました」
「俺がそうしたいからそうしただけだ。礼は要らねェ」
「あたしだって言いたいから言ってるだけです」
――寒さから、あたしたちはまた寄り添うようにして屯所への道を辿っていった。その歩調が心なしか普段よりも遅いものだとかそんなものは――突っ込むだけ野暮である。
しんしんと雪が降り注ぐ道を歩いて、歩いて―――ふたり揃って門をくぐったその姿から、漸く活動を開始しようとしていた隊士たちに全てを察されるのは、これからすぐのことなのだった。
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ユイ - 完結おめでとうございます。不器用なりにも優しさを見せてくれる土方さんにキュンキュンされっぱなしでした、最高です! (2019年10月19日 10時) (レス) id: 7837a845b7 (このIDを非表示/違反報告)
麗桜 - 完結おめでとうございます。とーってもおもしろかったです! (2019年8月10日 18時) (レス) id: a12faa1c0b (このIDを非表示/違反報告)
鳥雫(プロフ) - 良かったですよおおおおおおおお!!!ミツバさんを入れつつ夢主とも恋愛させる、ってのが本当良かったです!!これからも応援してます!! (2018年1月15日 1時) (レス) id: 40fe2f910d (このIDを非表示/違反報告)
ありす - 完結おめでとう!面白かったです! (2017年1月29日 15時) (レス) id: f707c0d1ab (このIDを非表示/違反報告)
林檎(プロフ) - 完結おめでとうございます!いつも楽しく読んでもらってました!新作頑張ってください(*^◯^*) (2016年11月13日 12時) (レス) id: 6c50a9e769 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:中村 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/nakamura_/
作成日時:2016年11月5日 23時