タイミング ページ21
「どうかしたのはお前だろ」
「あたし？」
どういうことですかソレ、と笑いながら彼の様子を確かめる。返り血があまりないってことはそんなに激しい斬り合いというわけでもなかったのか、よかった。
密かな安堵を積み重ねて自分を安心させようとするかのように視線でその人をなぞった。――でも。
「――そんなことより土方さん、怪我、しました？」
その視線が見つけたのは、安心とは真逆の不安要素。小さな頬の切り傷にもあたしの心はどうしようもなく揺らぐらしかった。
土方さんには動揺を気取られぬよう「気をつけてもらわないと」なんて視線を逸らせば彼があたしに視線を合わせるようにしゃがむ。右手で握り締めた雑巾の方を見つめて、ただただ無言を守っていると。
「…何かあったか」
「……何もないですよ。ほら、土方さんそんなこと気にするより早く休まないと。粛清帰りだし一週間後にも粛清が、」
「なにがそんなことだ。こちとらもう待ったんでな、これ以上待てるか」
「…何の話をしてるんですか、一体」
「だからつまり、――ちっと前みてェな顔してるってことだ」
そこで、一度あたしは固まってしまった。ちっと前、というのは土方さんに昔の話を話したあたりのことだろうか。――そうか、あたしはあのときのような顔をしているのか。
隠しきれない苦笑を携え土方さんを見上げる。しかと捉えたその瞳に浮かぶ心配の色に、それを抱えさせてしまっている自分への呆れがつのった。
……何にしろ、もうここまで言われてしまっては隠しきれないだろう、とあたしは黙秘を諦めて。
「――何かあったわけじゃないんです。……色々なタイミングが重なったというか」
「タイミング？」
「…粛清の度にちょっと心配になったり不安になったりとかはあったんです、今までにも」
それがどうして、今回だけ大きいのか。その理由も大体は予想がついている。
「――でも、粛清が久しぶりだったのと、人に昔の話をしてから初めての粛清だったのと、……惚れた相手をそういう場に送り出すっていうデジャヴとで、………どうにも不安が」
情けなくてすみません、とまた苦笑い。土方さんはあたしよりも苦そうな顔をして「謝んな」と息を吐いた。
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ユイ - 完結おめでとうございます。不器用なりにも優しさを見せてくれる土方さんにキュンキュンされっぱなしでした、最高です！ (2019年10月19日 10時) (
レス) id: 7837a845b7 (このIDを非表示/違反報告)
麗桜 - 完結おめでとうございます。とーってもおもしろかったです！ (2019年8月10日 18時) (レス) id: a12faa1c0b (このIDを非表示/違反報告)
鳥雫(プロフ) - 良かったですよおおおおおおおお！！！ミツバさんを入れつつ夢主とも恋愛させる、ってのが本当良かったです！！これからも応援してます！！ (2018年1月15日 1時) (レス) id: 40fe2f910d (このIDを非表示/違反報告)
ありす - 完結おめでとう！面白かったです！ (2017年1月29日 15時) (レス) id: f707c0d1ab (このIDを非表示/違反報告)
林檎(プロフ) - 完結おめでとうございます！いつも楽しく読んでもらってました！新作頑張ってください(*^◯^*) (2016年11月13日 12時) (レス) id: 6c50a9e769 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：中村
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/nakamura_/
作成日時：2016年11月5日 23時
