視界の中で ページ17
「――血に塗れた?」
かち合った視線の向こう、落とされた言葉の一部分。それを繰り返してみれば彼は「その通りだ」と。
「…俺たちゃ斬るのが生業みてェなもんだろ。――この手が何人の血を被ったのか、数えるが難しい。
……粛清ともなれば、そんな事実が諸々目の前に叩きつけられるわけだ」
んで、そういう汚れた手で触れてもいいもんなのか、女ってのは。
それは疑問の色を纏っていて、けれど確信めいてもいた。既にあたしが言おうとしている言葉は見透かされているらしく。
「汚れてなんかいませんよ。……とは、言いきれないですけど」
しかしそうと知りながらあたしは予想通りを紡ぐ。
汚いとは思わないけど、彼らが血を被っているのは事実だ。――でも。
眼光鋭いその瞳を見上げて、少しだけ、微笑んで。
「それは土方さんが命を繋げてくれた証拠だから」
ここにいると忘れそうになるけど、アホな大騒ぎをする裏で彼らは綺麗事の通用しないところに生きている。
ならばそうである以上、その手がいくら血に塗れたって汚れたって、まずここにいてくれるということに感謝しなければならない。
「……あと、自分勝手かもしれないですけど――あたしにとって土方さんの手は、綺麗なものです」
「…そりゃ、」
「言葉の通りです」
あたしの視界の中で、あたしがその人に関わった中で判断すれば、その手はひどく優しい。いつもあたしの涙を拭いさっていってしまう。
ふっと目を和らげた彼に「変なこと言い出さないで下さい」なんて笑えばワシャワシャと頭をかき回された。
「…犬じゃないんですよ」
「丁度いい所にあったんでな。――予想通り肝の据わったこと言いやがると思ってたらオマケまでついてきた」
「オマケって!」
説教モードへ入りかけたあたしを遮るように「それでお前はどうしたんだ」と土方さんの声が届く。――不安だったの、バレてたか。
彼らが無事に帰ってきたとはいえすぐそこにはまた粛清が控えている。あたしは密かにそれへの不安をつのらせていたのだけれど。
「――とりあえず、今は土方さんのおかげでなんとかなってます」
もしかしたら先程飼い犬よろしく頭を撫でられたせいだろうか。今のところ、不安はなくなっていた。
土方さんも何か言いたげながら「そうか」と紫煙を吐き出し。
「…んじゃ、今日は休めよ」
「土方さんも」
今夜はよく眠れそうだと、あたしはひとり微笑を浮かべたのだった。
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ユイ - 完結おめでとうございます。不器用なりにも優しさを見せてくれる土方さんにキュンキュンされっぱなしでした、最高です! (2019年10月19日 10時) (レス) id: 7837a845b7 (このIDを非表示/違反報告)
麗桜 - 完結おめでとうございます。とーってもおもしろかったです! (2019年8月10日 18時) (レス) id: a12faa1c0b (このIDを非表示/違反報告)
鳥雫(プロフ) - 良かったですよおおおおおおおお!!!ミツバさんを入れつつ夢主とも恋愛させる、ってのが本当良かったです!!これからも応援してます!! (2018年1月15日 1時) (レス) id: 40fe2f910d (このIDを非表示/違反報告)
ありす - 完結おめでとう!面白かったです! (2017年1月29日 15時) (レス) id: f707c0d1ab (このIDを非表示/違反報告)
林檎(プロフ) - 完結おめでとうございます!いつも楽しく読んでもらってました!新作頑張ってください(*^◯^*) (2016年11月13日 12時) (レス) id: 6c50a9e769 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:中村 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/nakamura_/
作成日時:2016年11月5日 23時