レアな機会 ページ23
――――――
「――た、ただ今戻りましたー……」
――志村家訪問から、数時間。あたりはすっかり橙の陽の光に包まれた頃。……そんな声を万事屋へ落としたのは私であって。只今メイクアップとやらを済ませたところなのである。
頬やら唇やらに感じるいつもより少しだけ厚めなそれに違和感を感じながら、返事のない万事屋内へ恐る恐る足を踏み入れた。
「ぎ、銀さん?神楽ちゃん?」
ちなみに言うと新八君はあのまま帰宅ということになった。私はとりあえず顔の評価を受けなければと一旦彼らふたり――というか、主に銀さんのいるここへ戻ってきたのだけれども。
(……反応なし。)
絶賛デジャヴ中である。どうせまた寝ているんだろうな、なんて考えつつ居間の横引き戸を開けば、予想通り。
「…まったく……」
社長椅子の上でジャンプを顔に乗せたまま眠ってしまっているその人の姿が視界へ入り込んだ。
(……この人は寝るかジャンプを読むかしかしてないのかもしれない。)
仕方ないなぁ、と溢れた笑いは思いの外柔らかいものとなっていた。ロクでもないはずなのに憎めないのはやっぱりこの人の不思議な魅力かなにかのせいなんだろうか。――そんな思案を、しまいこみ。
「――銀さん?」
一度その名を呼んでみた。無論反応はない。ジャンプをどけてみようかと考えて手を伸ばしかけはしたんだけども――…なんだか。
(……起こすのも、もったいない。)
いつも銀さんには酷いことを言われまくっている気がするし、仕返しをする機会なんてこんな時しかないのである。銀さん起こそう大作戦から銀さん寝起きドッキリ大作戦へと方針を転換し、手の行く先をジャンプからその天パへと変更した。
ドキドキと妙なスリルを感じながら、ぐりんぐりんのそれに触れてみる。ふわふわとした案外柔らかい感触に、少しテンションが上昇したそのとき。
「――――……オイオイ、何してくれちまってんの?」
――ジャンプの下から、発された声。そしてガシリと掴まれた私の右手首。
「ヒィィッ…!!?」
………思わず、情けない声が漏れた。
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高杉紗夜香(プロフ) - よく銀さんは胸が問題と言っていますが、中村さん的にはどれくらいが小さくてどれくらいが大きいんですか? (2018年1月17日 14時) (レス) id: 47ea433c10 (このIDを非表示/違反報告)
ピピ - 中村さんの作品、いつも読ませていただいてます!ヒロインと銀さんのやり取りが面白くて大好きです!これからも頑張ってください! (2016年10月10日 22時) (レス) id: 0ec549c041 (このIDを非表示/違反報告)
中村(平日低浮上)(プロフ) - 皆様コメントありがとうございます!!コマンド、笑ってくださって嬉しいです笑 じょは…ご想像におまかせします! なんとか一巻か二巻におさまるかな、という感じです。よろしくしていただけたらと思います…!! (2016年10月9日 18時) (レス) id: c9af2bf87c (このIDを非表示/違反報告)
ユキ(プロフ) - じょ、とは一体……上玉?上等?← (2016年10月9日 8時) (レス) id: b4895c0cf1 (このIDを非表示/違反報告)
まさか(プロフ) - コマンドでお茶をふく…リアルに吹きました五年ぶりくらいに…笑 応援してます! (2016年10月7日 20時) (レス) id: fc0d9ef477 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:中村 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/nakamura_/
作成日時:2016年10月1日 23時