史上最低の第一声 ページ14
――――――――
――――――
――ダイエット開始から、三週間強。前回の万事屋訪問からは二週間ほど。
ここのところ働き詰めだった私はようやく手に入れた休日に万事屋へ赴くため足を動かしていた。……ちなみに仕事というのはアルバイトかけもちである。つまるところフリーターである。
就職氷河期は本当に恐ろしい、なんて思いながらようやくたどり着いた万事屋の目の前。3度目の訪問にもはや遠慮はなく、ガラリとその戸を開いた。
「――こんにちは、Aです！」
……開いた、のだけれど。
(………アレ。)
いつもなら顔をしてくれる新八くんの姿が見当たらない。ついでに言えば返答もない。……もしや留守か、と考えたけれど鍵はかかっていなかったし。
「……だれかいますかー…？」
恐る恐る声をかけてみた。…が、しかし。万事屋内は静寂に包まれるのみで。
「…おじゃましちゃいますよ………？」
私はたいへんビクビクとしながら、上がらせてもらったのだった。
＊
――玄関からビビりつつ廊下を進んで数秒、目の前にはいつもの居間へつながる横引き戸が聳えている。
もしこれを開けても誰もいなかったら帰ろう、そう強く心に決めながら。
「――こんにちは！」
私はそれを開け放った。――するとそこには一つの人影が認められて。
「…銀さん？」
ジャンプを顔の上へ乗せて寝転がるその人が銀髪の彼だと気づくまでそうはかからなかった。なんだ寝てたのか、と一息ついて、しかしまた違う焦りが湧いてくる。
(……いくら依頼人とはいえ、コレ不法侵入だったり…？)
それならば一大事だ。もう美人云々言ってる場合ではなくなってしまう。困る。
銀さんも就寝中なことだし新八くん神楽ちゃんも見当たらないし、万事屋はまたの機会にしようと踵を返しかけた、そのとき。
「――胸でかくなったか」
「………起きてたんですか」
かけられた失礼極まりない声と思わず跳ねた私の肩。びっくりした、と息を吐き出せば視界の端で彼がジャンプを顔から取り除いていた。
(……というか、第一声が胸って…。)
一体デリカシーやら羞恥心やらどこへ置いてきてしまったんだこの人は。最早呆れしか浮かばない私に銀さんからの視線が向いた。
寝起きだからかそれともコレがデフォルトなのか、1mmの気力も感じさせないその目。…しかしどこか惹き付けられるそれから、なんとなく目をそらせずにいると。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 480人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「銀魂」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
高杉紗夜香(プロフ) - よく銀さんは胸が問題と言っていますが、中村さん的にはどれくらいが小さくてどれくらいが大きいんですか？ (2018年1月17日 14時) (
レス) id: 47ea433c10 (このIDを非表示/違反報告)
ピピ - 中村さんの作品、いつも読ませていただいてます！ヒロインと銀さんのやり取りが面白くて大好きです！これからも頑張ってください！ (2016年10月10日 22時) (レス) id: 0ec549c041 (このIDを非表示/違反報告)
中村(平日低浮上)(プロフ) - 皆様コメントありがとうございます!!コマンド、笑ってくださって嬉しいです笑 じょは…ご想像におまかせします！ なんとか一巻か二巻におさまるかな、という感じです。よろしくしていただけたらと思います…!! (2016年10月9日 18時) (レス) id: c9af2bf87c (このIDを非表示/違反報告)
ユキ(プロフ) - じょ、とは一体……上玉?上等?← (2016年10月9日 8時) (レス) id: b4895c0cf1 (このIDを非表示/違反報告)
まさか(プロフ) - コマンドでお茶をふく…リアルに吹きました五年ぶりくらいに…笑 応援してます！ (2016年10月7日 20時) (レス) id: fc0d9ef477 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：中村
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/nakamura_/
作成日時：2016年10月1日 23時
