にやり ページ22
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――ヴーヴー、とポケットの中でガラパゴスが存在を主張する今日この頃。事実を紡いだ、翌日。
今日も今日とて社会科教室へ足を運んでいる途中の私は、ポケットの中のそれににやりとした。…きっとそれの差出人は沖田くんだ。しかし今日幾度目かのそれを、私はまだ一度も確認していなくて。
(……だって、折角だから。)
面と向かって、話したい。ここまで反応なしならばきっと沖田くんだって文明の利器を媒介するのは諦めるだろう。
三階へたどり着いた私は見慣れた扉に手をかけて、開く。――と。
「――――おっせェ」
――珍しく、久しぶりに。そこにいたのは沖田くん。…自然と、笑顔が浮かんだ。
「待っててくれたんですか!」
「どっかのバカがちっともその古いガラケー開かねーんで仕方なく」
「ひどい言い様ですねえ」
失礼だな、なんて思いながら笑ってしまう。笑うついでに涙も出てきそうだ。――なんて心地いいんだろう、彼は。
涙こそ出ていないものの、きっと泣き笑いのような不思議な表情になっているだろう私は誤魔化すように口を開いた。
「……それで今日は、どうしたんですか?」
「とぼけんじゃねーや。こちとらじっくり攻略してやろうと思ってたってのに勝手に急展開で進みやがって」
「何の話ですかわけがわかりません」
「ぶっ飛ばすぞ」
相変わらずの脅し文句に冷や汗が流れる。けれど笑みは消えなかった。……だってその言い方だと、なんだか。――沖田くんの方の気持ちも、わかってしまったから。
そんな私の様子を一瞥した沖田くんは、はぁとため息を吐き。
「――――今日の新聞、読んだ」
「はい」
「ありゃ、俺に向けたととって異論はねーな」
質問のようで、質問ではない。疑問符がついていそうで、ついていない。
確信めいたそれに私が浮かべるのは、甘くて苦い、苦笑い。
「――本来新聞は、全校生徒へ向けて作るものです。……特定の誰かに宛てるなんてこと、絶対だめなんですけど」
だけど、ちょっとくらい。誰も気づかない程度に。
「職権乱用して、紡ぎました。――沖田くんに宛てたもので間違いないです」
言い切ると同時、彼は私を包み込んだ。守ると言った距離が、なくなっていって。
「……粋なことしやがるもんでィ」
「言葉とは、粋なものです」
――――社会科教室は、新聞部ふたりの静かな笑いで満たされたのだった。
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ミズキ - これ一番好きです、何でそんなに評価低いのか全く解りません!主人公も好き! (2017年11月25日 12時) (レス) id: 76bba592ea (このIDを非表示/違反報告)
せりか(プロフ) - 3zの沖田くん大好きです! (2016年9月30日 10時) (レス) id: fb7f603cb6 (このIDを非表示/違反報告)
中村@テスト期間(プロフ) - 雪月華さん» 本当ですね!直させて頂きました...!すみません! きっとご指摘頂けないとそのままだったと思うので、とてもとても助かりました。本当にありがとうございます!(´ヮ`;)また何かありましたら、お知らせ頂けると幸いです! (2016年9月19日 23時) (レス) id: 05ad8fd9f2 (このIDを非表示/違反報告)
中村@テスト期間(プロフ) - 皆様コメント感謝です!お陰様で完結させて頂きました。とても短くなってしまい恐縮ですが、面白かったと言っていただけて嬉しさの極みです。本当にありがとうございます!! (2016年9月19日 22時) (レス) id: 05ad8fd9f2 (このIDを非表示/違反報告)
雪月華(プロフ) - すみません。1つ聞いてもよろしいでしょうか?《某月某日》の【明日に役立つ便利情報】の「最新の注意を…」は「細心の注意を…」ではないでしょうか。とっても面白かったです!テスト近いのについつい読んでしまいました。これからも面白い作品をお願いします! (2016年9月19日 22時) (レス) id: 65bc9c8f3a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:中村 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/nakamura_/
作成日時:2016年9月18日 13時