【銀魂3z】少年少女よ言葉を紡げ！【沖田総悟】

帰宅宣言 ページ11

「――え、ちょ、はい…？」



ようやく絞り出した声はとてもじゃないけど言葉になんてならなかった。ぱらぱらと落とされる単音に呆れ顔を見せるのはこの状況を作り出した張本人であり、「ボキャブラリー死滅してんぞ」と。

新聞部として、新聞を書いている身として、言葉を愛する者として、それは一番ダメなことであるはずなのだけれど――…それにしたって、混乱が大きい。


バクバクドキドキと、心臓が鳴った。それは昨日3年z組で体験したような恐怖からのものではなくて、もっとそわそわするようなもの。




バカみたいにこんがらがった頭の中で、客観的に見たらこの状況はどんなものなのだろうかと考えた。――放課後の教室、ひとつの机を挟んで向かい合う男女、男子生徒の手は女子生徒の後頭部に回っていて、ふたりの間にある距離はほんの数センチ。



(……なんということでしょう。)



それはもう、ラブシーン以外の何物でもないのではないだろうか。…また、頬が熱くなっていくのがわかる。

とにもかくにもこの状況をなんとかしよう、と緊張からか照れからか震えている口を開き。




「お、おおおお沖田くん」


「何でィ、そんなにビビっちまって」


「いや！なんというか！…何を血迷ってるんですか!?」


「てめーのせいで血迷ってる」


「私ィィ!!?」




心当たりがなさすぎて恐怖である。解決方法もまったくもって分からないし。
私の様子に呆れたのかどうしたのかわからないけれど、沖田くんはため息混じりで手を離した。――彼との間に距離が戻ってほっと安堵の息を吐く。

沖田くんは数秒間私の顔を見つめていたかと思うと、



「帰る」


「え、ええええ!!?」




――唐突すぎる帰宅宣言を、落とした。なにか説明を！と声に出そうとした頃には彼はもう教室のドアに手をかけていて。




「ちょ…沖田くん!!?」


「今自分に死ぬほど呆れてんでィ、放っとけ」


「はいィ…？」




先程よりも少し薄れた不機嫌をまといながら、彼は社会科教室を出て行ってしまった。……いやまぁ、なんというか。――とりあえず、



(……落ち着け、心臓…！)



結果社会科教室に一人取り残された私は、おさまらない顔の熱を冷ますように机に突っ伏したのだった。

イラつく　side沖田くん→←語弊

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す