【銀魂】化けの皮【土方十四郎】

ストレス発散 ページ8

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「――ありえない！」



――ドン、と私はビールのジョッキを叩きつけるようにテーブルへ置いた。…現在地、寂れた飲み屋のカウンター席。

一時間ほど前に終わらせた仕事での出来事――偽装カップル云々について憤りが抑えられなかった私は、仕事が終わると同時に飲み屋へ繰り出したのだ。



そうして。




「ぶっ殺してえ！」


「嬢ちゃん大丈夫かい」


「大丈夫だったらこんなとこ来てないっての」


「酷でぇなぁ、おい」




こうやって、見ず知らずの店主にストレスをぶつけているというわけ。

髪の毛をかきあげため息を吐いた私はまたビールをあおって。……酒はこういう時にいい。いい感じに自我を失える。




(――それにしても。)



どういう風の吹き回しだ、全く。土方十四郎が私を偽装カップルの相手に指名するだなんて。

酒臭い息を吐き出しつつそいつの言い分を思い返してみた。…ゴリラの嫁になる予定のお妙とはふりでもそんなことできん、か。



まぁそれは、わからんでもないけども。




(……でも、これがちょっと前だったら、)



お妙はそういう訳で却下としても、私にお鉢が回ってくることなんて有り得ただろうか。

土方十四郎とは初対面の時から安定して嫌いあっている自信があるけれど、嫌いの種類は違ってきているのかもしれない、と考えた。酔っ払いの頭でだけど。



だって見合いの前くらいのときならばこんな話があったってどうにかして私だけは避けていたはずだ、奴はきっと。絶対にあんなこと言い出さなかったと断言できる。


だから多分、奴の中で安定して私を嫌う気持ちはあるけれども、ただの嫌いから偽装カップルをやってもいい程度の嫌いまでそれは変化したということなのだろう。






――そうしてそれは、私にも当てはまる話だ。



もしも土方十四郎に指名されるようになったばかりのあの頃ならば。…きっと私は、あんな場の空気に流されて諦めたりなんかしなかった。どうにかして逃れていたはずだ、不可能ではないだろうし。



思い出すのは、極めて似たシチュエーションだったような気がしなくもない見合いの件のお願いをされた時である。圧倒的権力差さえなければ、私は確実に断っていた。……今回とは違って。






言い逃れの余地はあるにも関わらず偽装カップルの相手役をOKしてやるくらいには私も土方十四郎への気持ちを改めたらしい。そんな事実が見えてきて、私はまたビールをあおった。

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