バカなのか side土方十四郎 ページ46
【土方十四郎side】
*
「――どうだ、まだ痛むか」
「……普通抱え上げます?羞恥心ってもんが、…いやまぁ人いないけど、……だけどこう…」
ベンチにそいつを下ろして、十数秒。様子を伺うため言葉をかければ葛藤真っ最中らしき言葉が返ってきた。
「んなこたどうでもいいんだよ。足大丈夫か」
「どうでもよくはないだろ!大問題だぞ!バカなの!?」
「誰がバカだ。足どうだって聞いてんだよこちとら」
誰も何もお前だバカ、と恨み言を続けるそいつであるが、動揺が透けて見えるせいか迫力は無に等しい。
(…柄にもなく動揺しやがって。)
おまけに質問には一切答えないときた。これ以上聞いてもらちがあかない。
仕方なく無断で下駄を脱がせ、その口からまた素っ頓狂な声が漏れた、そのとき。
「――だからそういうのは一言断ってから、」
そいつの言葉を遮るように――…夜空へ、花が咲いた。
思わず言葉を引っ込めたそいつも俺も、自然と視線は頭上へ上がる。咲いては散りを繰り返す色とりどりの花は、そいつの白い浴衣も白い肌も、その色に染めているようで。
(――――こりゃ、)
やべェかも、しれねェな。
いつの間にか俺の視線の先は夜空から下へ――その女のもとへ、釘付けとなっていた。
今まで散々睨みつけられてきたその目が今映すのは大輪の花だ。赤、青、黄、その他諸々。それの中に咲く火の花は、綺麗だ。
綺麗で、あるが。
(……俺は、)
つくづく惚れちまっているな、こいつに。湧き上がってきた本音はそんなことを改めて俺に知らせた。……アホなのか、俺ァ。
――――その目の中に、自分を映したいと思うなんざ。
「…A」
久しぶりにその名を呼べば、すこしの驚きを見せながら女は――Aは、こちらを見上げた。
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蘓澳 - さすが中村さん!って感じで楽しく読ませて頂きました! (2016年10月11日 17時) (レス) id: 6f5c53b9aa (このIDを非表示/違反報告)
中村@平日低浮上(プロフ) - 皆様コメントありがとうございます!!もう嬉しすぎてどうすれば…!!! お陰様で二巻も完結とさせていただきました。次巻で完結かと思われますが、お付き合い頂けたら幸いですヽ(*´∀`)ノ (2016年9月4日 0時) (レス) id: c9af2bf87c (このIDを非表示/違反報告)
四葉(プロフ) - 三巻楽しみにしてます!夢主ちゃんホントにいい性格ですよね!見てて飽きないですし、凄く応援したくなります♪ (2016年9月3日 23時) (レス) id: ca3544b3d3 (このIDを非表示/違反報告)
ユキ(プロフ) - 三巻も楽しみです!とりあえず土方さんカッコイイし夢主がイケメンすぎて辛いです← (2016年9月3日 23時) (レス) id: b4895c0cf1 (このIDを非表示/違反報告)
命(プロフ) - 中村さんの作品は夢主さんの性格がリアルで、深く入り込めて読んでいて楽しいです。これからも応援しています!無理をなさらず頑張ってください! (2016年9月3日 23時) (レス) id: 6d7143e2c0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:中村 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/nakamura_/
作成日時:2016年8月25日 23時