見方を変えてみれば、 ページ46
「――焦る?」
疑問から首をかしげた。何を焦るというのだろう、彼が。
そんな私の気持ちを察したのか、後輩はこちらへ視線を向け。
「真塩さん、ここ何日かすごく幸せそうだったので」
「……それで、なんで焦るんですか?」
「好い人ができそうなのかな、と分析しました」
そうしたら本格的に僕は失恋じゃないですか、とのこと。――え、えええ。
(――ドのつく、直球。)
不意にぶつけられた二度目の告白のようなものに目を見開いてしまう。…心が揺れるとかいうことは、ないのだけれど。
「えっ…と、その。…気持ちは嬉しいんだけど――」
「――あ、いえいえ!」
とりあえず二度目のお断りをしようと思ったら、当人に遮られた。「流石にこのタイミングで告白するほど馬鹿じゃないですって」とその言葉を聞く限り先ほどのものは告白のつもりではなかったらしい。
「ただ、僕にもチャンスをくれないかなと」
「チャンス?」
「…断られても、好き…なんですよね」
真塩さんからしたら迷惑かもしれないけど、なんて。
「――迷惑では、ないよ」
「…え?」
気づけばそんな言葉を返していた。期待を持たせるわけではない。だけど迷惑なんてとんでもない。
「そりゃ、人に好きになってもらえたら嬉しくない訳ない。…だけど」
「なんでしょう?」
「……私は、応えられないから」
――好きになった人じゃないと、嫌だから。
酔いも手伝って、純情すぎて呆れられた台詞をさらりと口にできた。後輩は少し驚いたあと、困ったように笑う。
「俺も一緒です」
「…、」
「綺麗で、なんとなく憧れてずっと見てました。いつの間にか本気になって…同じです」
「……でも私も、」
「だから」
とりあえず悪あがきだけさせてくださいよ。
ジョッキを空にした彼は私を見つめてそう言った。――そうか、つまり。見方を変えれば私と彼は同じ立場なのか。
そして、もし。もし私が坂田さんに思いを伝えたりなんかして、断られて。坂田さんに好きな人がいるらしいと勘付いてしまったとしても。
(……私は、諦められないだろうなあ。)
諦められるほど小さな気持ちではない、だろうなあ。コレは。
「――わかった」
私も残り少なくなっていたビールを飲み干しそう返す。
「…振り向かない、けどね」
付け足した言葉にも、彼は「はい」と歯切れよく言って笑ったのだった。
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四葉(プロフ) - 中村さんの作品、いつも見ております!銀八がかっこよすぎますね…あんなお隣さん欲しい…これからも頑張って下さい(*´ω`*) (2016年8月8日 7時) (レス) id: ca3544b3d3 (このIDを非表示/違反報告)
(・・) - 銀八が…完全に私をキュン死させに来てる…!((更新頑張ってください!応援してます! (2016年8月8日 1時) (レス) id: 22f5214bf5 (このIDを非表示/違反報告)
中村@本日浮上(プロフ) - 皆様コメント感謝です…!!ひとつひとつのお言葉に力をもらっています、ありがとうございます!行き当たりばったりの亀更新ですが、できる限りがんばりますのでよろしくお願い致しますー! (2016年7月31日 22時) (レス) id: c9af2bf87c (このIDを非表示/違反報告)
サド丸78号(プロフ) - 銀八先生イケメンです!!中村さんの作品はどれもキュンキュンします!! (2016年7月31日 21時) (レス) id: e915f4d862 (このIDを非表示/違反報告)
ゆおん(プロフ) - 素敵すぎて惚れてしまいそうです……!!お忙しい中、更新ありがとうございます!Twitterの方、リプ送らせてもらいましたので良ければ見てください。これからも応援してます!! (2016年7月27日 1時) (レス) id: 46f4f5d279 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:中村 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/nakamura_/
作成日時:2015年11月29日 11時