【銀魂】おとなりさん【坂田銀八】

私の本当の ページ41

――――――



「――好き、か」



名付けられたばかりの感情を、小さく呟いてみる午後8時。静かな部屋に少し反響するそれがどこか気恥ずかしくなり、ポチ、とテレビの電源をつけた。

一気に騒がしくなった室内でぼんやりと液晶画面を見つめながら膝を抱える。……好き、って。



(…こういうことだったのか……。)



隣の席の男子、同じ部活の先輩、委員会の同級生。告白をすることはなかったにしろ、流石に人を好きになったことくらいはあった。――でも、今考えてみると。


(……とても、本気なんかじゃなかったのかもしれない。)


ちょっと気になって。ちょっと憧れて。ちょっとかっこいいなって。
恋情に成長する前の、恋情への入口にも立っていないそんな気持ちから、何となく好きだと思い込んでいただけだったのかもしれない。

…そう、今ならわかる。




――多分、私の本当の“好き”という気持ちは、もっとゆっくりとしたものだ。
きっとそれまで気になってもいないし憧れてもいないし、かっこいいな、なんてぽうっとしてたわけでもない。



ただただ、なんとなく飲みに行って。いつの間にか貴重な、大きな存在となっていて。でも恋愛関係などではないと笑い飛ばせるくらいの間柄で。





だけれども。

好きなんでしょ、と言われたら、違和感なく受け入れることができてしまう。





こんな何でもないような、言われなければ気づかないような、これが。――私の、恋だ。

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