このご時世ですから ページ34
「…坂田さーん?」
応答のないその人に、気持ち小さな声でもう一度呼びかける。…無理に起こすのもあれだし、これで起きなければ放っておこう。
私の声が途切れたせいかブオーン、と何やら不気味な音を立てて動くエアコンのみがこの部屋で存在感を放っている。坂田さんからの反応は、ない。
(…じゃぁ、お粥はとりあえず冷蔵庫行きとして、)
他にやれること、あるだろうか。
一応確認のために坂田さんの汗ばんだおでこへ手を当ててみると、やはりかなりの熱が伝わってきた。ということは、多分風邪かな。
冷えピタシートのようなものは果たしてこの部屋にあるだろうか、と罪悪感混じりであたりを探してみるも、それらしきものは出てこず。
(仕方ない。…ここはいっちょ、)
古典的な方法で、行きますか。
洗面台へと失礼した私は、未使用らしきタオルを拝借し水に濡らす。…そう、よくありがちなアレである。濡れタオルというやつである。
水を吸収してひたひたになったそれを思い切り絞りながら先ほどのおでこの熱さを思い出す。…きついだろうな、沢山汗もかいてたし。
(―――…って、)
――そういえば、……汗、なんとかしなくちゃ。
坂田さんが横になるあの部屋では、段々と冷気が存在を主張し始めていた。きっと汗をかいたままでは冷えてしまう。風邪が悪化したら元も子もない。
…でも、ならばどうすればいいか、という話で。……策はある。一般常識さえあれば誰でも思いつくような策が。…しかし!
濡れたタオルで体を拭くなんていうそれを、はたしてただの隣人である私が実行してもいいのだろうか。一般常識的に、法律的にセーフなのだろうか。
思いやり、女性から男性へのセクシャルハラスメント、不法侵入の上ボディタッチ、病人への労わり、ありがた迷惑、お節介。頭の中が葛藤で埋め尽くされて、そんな言葉たちがあちらこちらへ舞った。
「………うーん、」
目の前の鏡には、おでこに乗せる用のタオルを絞る体勢のまま固まった私の姿が映っている。その顔は、これ以上なく難しい顔をしていた。
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四葉(プロフ) - 中村さんの作品、いつも見ております!銀八がかっこよすぎますね…あんなお隣さん欲しい…これからも頑張って下さい(*´ω`*) (2016年8月8日 7時) (レス) id: ca3544b3d3 (このIDを非表示/違反報告)
(・・) - 銀八が…完全に私をキュン死させに来てる…!((更新頑張ってください!応援してます! (2016年8月8日 1時) (レス) id: 22f5214bf5 (このIDを非表示/違反報告)
中村@本日浮上(プロフ) - 皆様コメント感謝です…!!ひとつひとつのお言葉に力をもらっています、ありがとうございます!行き当たりばったりの亀更新ですが、できる限りがんばりますのでよろしくお願い致しますー! (2016年7月31日 22時) (レス) id: c9af2bf87c (このIDを非表示/違反報告)
サド丸78号(プロフ) - 銀八先生イケメンです!!中村さんの作品はどれもキュンキュンします!! (2016年7月31日 21時) (レス) id: e915f4d862 (このIDを非表示/違反報告)
ゆおん(プロフ) - 素敵すぎて惚れてしまいそうです……!!お忙しい中、更新ありがとうございます!Twitterの方、リプ送らせてもらいましたので良ければ見てください。これからも応援してます!! (2016年7月27日 1時) (レス) id: 46f4f5d279 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:中村 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/nakamura_/
作成日時:2015年11月29日 11時