敗北感 ページ33
「と、とりあえず何か作りますから!…っていうかエアコン付けますよ?」
体調不良の人に寒い部屋は毒かもしれないけれど…このままでは熱中症になってしまう。とりあえず部屋の温度を標準まで戻そうとスイッチを入れて。
(――さて。)
残る問題は食材があるかどうかだな、と坂田さんに向き直った。
「…坂田さん、少しすみません」
「……どーした」
「冷蔵庫、漁っちゃって大丈夫ですか…?」
私の言葉を受けた彼は、左手で前髪をかきあげつつ、力なくこちらを睨む。
「別に何もしなくて大丈夫だ、伝染るぞ」
「弱ったおとなりさんを助けるのは、隣人の義務ですから」
だから寝ててください、とタオルケットをかけてみた。坂田さんはもう反論する気力もないようで、腑に落ちない様子を見せながらも荒い息を吐いて目を閉じている。
(…ほんとに、きついんだなあ。)
私は中々体調を崩さないたちだから、少し代わってあげたくなってしまう。…こんなに弱ってる坂田さんを見るのも、初めてだし。
(――って、こんなことしてる場合じゃない。)
お粥くらい作れるくらいの材料があるといいな、なんて思いながら、私は冷蔵庫を覗かせてもらうことにしたのだった。
*
―――――
「――できたー…!」
――坂田さん宅にお邪魔させてもらってから、30分ほど。
私はというと、丁度玉子粥を完成させたところで。
(…それにしても。)
食材に充実したあの冷蔵庫の中身を思い出してため息をついた。
…どう考えても私の家の冷蔵庫なんかより遥かに充実していた。坂田さん自炊するんだなぁ、という意外性よりも負けた…という敗北感の方が強かった。
今度から私もきちんと自炊を頑張ろう、とよくわからない決意を固めながら、玉子粥を食卓らしきテーブルへ運び。
「…坂田さん、食べられますか?」
罪悪感を感じながらも、寝入っているその人をちょんちょんとつついてみた。
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四葉(プロフ) - 中村さんの作品、いつも見ております!銀八がかっこよすぎますね…あんなお隣さん欲しい…これからも頑張って下さい(*´ω`*) (2016年8月8日 7時) (レス) id: ca3544b3d3 (このIDを非表示/違反報告)
(・・) - 銀八が…完全に私をキュン死させに来てる…!((更新頑張ってください!応援してます! (2016年8月8日 1時) (レス) id: 22f5214bf5 (このIDを非表示/違反報告)
中村@本日浮上(プロフ) - 皆様コメント感謝です…!!ひとつひとつのお言葉に力をもらっています、ありがとうございます!行き当たりばったりの亀更新ですが、できる限りがんばりますのでよろしくお願い致しますー! (2016年7月31日 22時) (レス) id: c9af2bf87c (このIDを非表示/違反報告)
サド丸78号(プロフ) - 銀八先生イケメンです!!中村さんの作品はどれもキュンキュンします!! (2016年7月31日 21時) (レス) id: e915f4d862 (このIDを非表示/違反報告)
ゆおん(プロフ) - 素敵すぎて惚れてしまいそうです……!!お忙しい中、更新ありがとうございます!Twitterの方、リプ送らせてもらいましたので良ければ見てください。これからも応援してます!! (2016年7月27日 1時) (レス) id: 46f4f5d279 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:中村 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/nakamura_/
作成日時:2015年11月29日 11時