ヒーロー ページ18
ヒィヒィとお腹を抱えて笑う私が彼はどうにも不満なようで「ふざけてんのかてめー」とジロリ。
「だ、だって…坂田さん、が、ひ、ヒーロ、…ひぃッ」
「俺が見たお前で一番笑ってるのが俺を侮辱してる時ってなんなの?喧嘩売ってんの?」
そんなことを言われたって仕方がない。愛も勇気も正義も英雄も坂田さんにはまったく結びつかない言葉たちだ。かすりもしていないのだ。
「不可抗力ってやつです。潔く諦めましょう」
漸く収まってきた笑いにふぅ、とまだ少し陽気なものが滲むため息を零してまたビールを口に運んだ。
勿論不貞腐れる坂田さんは仏頂面で、私が思ってたよりも喜怒哀楽がわかりやすいんだなと少し面白くなった。やっぱり挨拶を交わすだけの仲では人となりなんてわからないものである。――と、そういえば。
私の頭に、またふとした疑問が浮かぶ。
「坂田さんって、やっぱり先生なんですよね?」
「それがどうかしたか」
「いや、意外だなって」
「喧嘩売ってる?」
そんなことはないんです!と慌てて弁解した。
「ただ、ちょっとやる気無さ気だし」
「……」
「規則とか守るの苦手そうだし」
「……」
「生徒を指導する姿とか想像つかないなって」
「お前もう喧嘩大売り出しだろ!!!」
そんなつもりはなかった。決してなかった。先ほどのことをほんの少し根に持っているのは否定できないけれど、多分喧嘩など売っていないはずだ、きっと。
「まあそんなことより!どんな感じで先生やってるんですか」
「…どんなっつっても普通じゃね?」
「普通…」
「授業したり補習したり、宿題やってこねー奴叱ったり…そうだな、あとは、」
腕を組んで考える坂田さん。
…本当に彼は先生としてちゃんとやってるんだなぁ、なんて。いいな、少しだけ楽しそう。…と。
「――あ、あと生徒が壊したもん片付けたり」
「はい?」
「暴動止めたり、減給阻止したり」
「…はい?」
「それとジャンプ読んだり」
「…どうなってるんですか昨今の高校は」
待って、ごめんなさい訂正。どうやら坂田さん、普通の先生とは一線を画していそうだ。
「……やっぱり坂田さん、真面目な仕事できそうにないですもんね」
「おいだから何回目だよハッ飛ばすぞコラ」
またまた笑いが舞い降り居酒屋を染める。
これが、私がおとなりさんと少しだけ親交を深めたある日の夜のお話であった。
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四葉(プロフ) - 中村さんの作品、いつも見ております!銀八がかっこよすぎますね…あんなお隣さん欲しい…これからも頑張って下さい(*´ω`*) (2016年8月8日 7時) (レス) id: ca3544b3d3 (このIDを非表示/違反報告)
(・・) - 銀八が…完全に私をキュン死させに来てる…!((更新頑張ってください!応援してます! (2016年8月8日 1時) (レス) id: 22f5214bf5 (このIDを非表示/違反報告)
中村@本日浮上(プロフ) - 皆様コメント感謝です…!!ひとつひとつのお言葉に力をもらっています、ありがとうございます!行き当たりばったりの亀更新ですが、できる限りがんばりますのでよろしくお願い致しますー! (2016年7月31日 22時) (レス) id: c9af2bf87c (このIDを非表示/違反報告)
サド丸78号(プロフ) - 銀八先生イケメンです!!中村さんの作品はどれもキュンキュンします!! (2016年7月31日 21時) (レス) id: e915f4d862 (このIDを非表示/違反報告)
ゆおん(プロフ) - 素敵すぎて惚れてしまいそうです……!!お忙しい中、更新ありがとうございます!Twitterの方、リプ送らせてもらいましたので良ければ見てください。これからも応援してます!! (2016年7月27日 1時) (レス) id: 46f4f5d279 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:中村 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/nakamura_/
作成日時:2015年11月29日 11時