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どうしようもなく ページ31

「――儚いものですね」


・・・花とは。世の中の、様々なものとは。


「・・全て、なくなってしまいそう」




――咲いた花は、散ってゆく。・・・私だって同じだ。

いつの日にか誰にも知られずこの世の塵となって消えゆく宿命なのかもしれない。――ならば。


(――それならば、私は。)



「・・・高杉さんの咲かせる花を、この目に収めてから消えゆきたいものです」



穏やかに、微笑みながら。視線を、真っ暗闇から彼の方へ移しながら。

私が静かに、そう言うと。


「・・何言ってやがる」

「・・・?」



「――俺ァ、呑気に咲いたあの花を散らせるだけだ」


「・・・散らせる・・」




なら、それを目に収めるまで。




「――――花の散り際は、美しいものでしょう?」



屋敷の小窓の向こう、風に攫われて薄紅が散ってゆく。

可憐で、儚く、艶やかなそれ。――どうしようもなく、美しいそれ。




「・・・参ってしまいますね」


「・・あァ?」



私の呟きに、高杉さんの目がこちらを向く。私はそれから目を逸した。・・・あぁ、本当に。


(――参ってしまう。)


高杉さんの成すことを、彼の隣でみたいと。みて、みたいと。――そんな望みがまた強くなった。



強くなって強くなって、もう溢れ出てしまいそうで。

溢れて、堪えきれなくなってしまいそうで。



・・・彼の目から逃げるように手元の徳利へ視線を落とす。

けれど、しかし。




「――――A」



――“それ”に、私は思わず彼を見上げてしまった。・・・きっと初めて呼ばれた私の名前。

初めて会ったとき呼ばれた“私という傀儡”の名前ではなく、しっかりと私の目を見つめながら、私に向かって、“私”を呼んだ高杉さん。




(・・・・ずるい。)


それに視線を上げないなんて、出来るわけがないじゃない。



高杉さんにどのような思惑があったのだかはわからないけれど、ともかく。




その思わず上げた視線が、見事に捕まってしまったことだけは、確かだ。・・そして。




「――――た、・・かすぎ、さん」


・・・きっと、その瞬間。


「・・・・・私、は。」




――私の感情も、溢れた。

溢れ出したもの→←桜



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設定タグ:銀魂 , 高杉晋助 , シリアス   
作品ジャンル:アニメ
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ユイ - 完結おめでとうございます。とても素敵な作品で、最初の方から休まず一気に読んでしまいました。それに、描写がとても綺麗でもあり、妖艶で惚れました。最高です。 (2019年10月20日 10時) (レス) id: 7837a845b7 (このIDを非表示/違反報告)
Physics(プロフ) - 流れるような描写がすごく綺麗でした!読了後に「色は匂へど散りぬるを」の最初の方を読み返して夢主の成長を感じ、色んな意味で強くなったなあ、なんて思ってしまいました。最後に、素敵な作品をありがとうございました! (2017年5月9日 18時) (レス) id: 28db851a9c (このIDを非表示/違反報告)
きなこもち - 完成おめでとうございます!初めて見たけど面白かったです!! (2017年3月26日 18時) (レス) id: 8a0b328429 (このIDを非表示/違反報告)
碧瀬(プロフ) - とても素敵な作品でした。完結おめでとうございます。 (2017年1月29日 1時) (レス) id: 33020b63e9 (このIDを非表示/違反報告)
呪者 - あぁ!高杉むずかしい!完結おめでとうございます!(^^) (2016年8月24日 10時) (レス) id: e80216b179 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:中村 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/nakamura_/  
作成日時:2015年3月23日 23時

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