至って単純な子供だまし ページ26
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――――重苦しい鉄製の扉を私が右手で引いたのは、高杉さんへ報告をしに行った二日後。
・・・もう無刹さんへの尋問はかなりの期間続いていて、そろそろ決着をつけねばならなくなってきた今日この頃のこと。
・・いつも通りキッとこちらを睨みつける無刹さんに会釈し、その部屋の中に入る。――それこそ“決着をつける”ために。
・・・・・この二日、ずっと考えていたのだ。彼女が、その想う誰かについてうっかりボロを出すような質問は何か、一番動揺する言葉は何か。・・そして。
・・・そして多分、私は見つけた。彼女はどうだか知らないけれど、少なくとも私ならば一番動揺するだろう言葉を。・・しかと、見つけた。
それは至って単純な子供だまし。・・カマをかける、と言えばいいだろうか。――まぁ、ともかく。
ともかく、早いところ仕掛けなければならない。仕掛けて、この騒動を終わらせて。・・彼に、貢献しなければ。・・・・でも、そのためには。
――――彼女にカマをかけるためには、その前に一つだけやっておかなければならないことがある。
「・・・・・――無刹さん」
無刹さんをじっと見つめて、私はそう発した。彼女の目がこちらを向くのを少しの間無言で待ったのち。
「・・・・・・無刹さん、貴女はその想う人のことが何よりも大切なの?」
「・・そうだけど?」
「――良かった」
ゆるりと笑った私を、彼女は訝しげに見つめる。
・・だってそれなら無刹さんは、これから私の発する言葉に確実に動揺するだろうから。
すぅ、と少し息を吸い、こちらを警戒している彼女の方をじぃと見つめた。
・・・・そして。
「――・・そういえば、今度大規模な戦闘があるようで」
「・・・戦闘?」
「――――上層部の戦闘員は、ほぼほぼ全員が駆り出されるようですよ。・・なんでも命の保証はないんだとか」
・・放ったのは、この二日間の私の苦悩の塊。長い時間を費やして、漸く思いついた打開策。
それを聞いた無刹さんはというと、
「―――・・!」
――――その綺麗な目を揺らして、顔を強ばらせて。・・・確実に、動揺していた。・・つまり。
(――彼女の、想い人は。)
戦闘員、なんだろう。きっと。
――とうとう突き止めてしまったな、なんてぼんやりと不思議な気持ちを抱えながら、私は彼女を見つめていたのだった。
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ユイ - 完結おめでとうございます。とても素敵な作品で、最初の方から休まず一気に読んでしまいました。それに、描写がとても綺麗でもあり、妖艶で惚れました。最高です。 (2019年10月20日 10時) (レス) id: 7837a845b7 (このIDを非表示/違反報告)
Physics(プロフ) - 流れるような描写がすごく綺麗でした!読了後に「色は匂へど散りぬるを」の最初の方を読み返して夢主の成長を感じ、色んな意味で強くなったなあ、なんて思ってしまいました。最後に、素敵な作品をありがとうございました! (2017年5月9日 18時) (レス) id: 28db851a9c (このIDを非表示/違反報告)
きなこもち - 完成おめでとうございます!初めて見たけど面白かったです!! (2017年3月26日 18時) (レス) id: 8a0b328429 (このIDを非表示/違反報告)
碧瀬(プロフ) - とても素敵な作品でした。完結おめでとうございます。 (2017年1月29日 1時) (レス) id: 33020b63e9 (このIDを非表示/違反報告)
呪者 - あぁ!高杉むずかしい!完結おめでとうございます!(^^) (2016年8月24日 10時) (レス) id: e80216b179 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:中村 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/nakamura_/
作成日時:2015年3月23日 23時