消耗、 ページ15
――――――――
――――ばたん、と。
背後で閉まったあの鉄製の扉。・・今は数時間に及ぶ尋問を終えたところで。
(・・・・終わ、った・・・。)
幾重にもかけられた鍵を一つ一つかけ直していき、最後の一つががちゃりと音を立てる。・・・そして、それと同時に。
「・・――はぁ・・・」
――――体の力が、抜けた。
・・・あの部屋の中にいる間は余裕のなさを気取られたらいけないから。彼女に、弱みを握られてしまうかもしれないから。
だから私は、ずっと気を張っていたのだけれど。
(・・・・流石に無理があったかもしれない。)
廊下に座り込んで、背中を扉に預ける。・・・瞼を閉じればなんだかいやに落ち着いて。
(・・・彼女は今どうしているんだろうか。)
扉の向こうのたった6畳ほどの空間。その中の彼女は今何を思い、何をしているんだろう。
もしかしたら私と同じくこうして瞼を閉じているのかもしれないな、と不思議な気分に浸っていれば。
「――――オイ」
「・・・!」
「何してんだ」
――聞こえたのは、落ち着くその声。目を開くと、こちらを見下ろす高杉さんの姿が瞳に映って。
「たか、すぎさん」
「・・・消耗してんな」
「・・申し訳ございません」
私の言葉に「謝るこたァねーだろ」と高杉さん。
私は、苦笑いを返した。
「・・・・・・少しだけ、気を張りすぎてしまったもので」
「構いやしねェよ。・・てめェがこういうことに慣れてねェのは百も承知だ」
「・・・左様ですか」
なんというか・・、・・・少なくとも喜んではいけない気がする。
複雑な顔で彼を見上げ続けていると、「立て」なんて手が差し出されて。
「・・申し訳ございません」
いつもならば断って自分で立ち上がるところなのだけれど、どうにも今はそんな気力もない。
彼の言葉に甘えるように、その右手をとった。――しかし。
「・・――っ、」
・・・・疲労がピークだったのか、本当に気力が尽きていたのか確かではない。・・でも、立ち上がったその瞬間ゆらりと視界が揺らいだことだけは確かである。
つまり、私は。
「――あ・・、」
バランスを崩して、高杉さんの方へ倒れ込んでしまったというか。
「・・・こりゃァ、大分限界か」
――彼が私を抱きとめてくれたというか、なんというか。
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ユイ - 完結おめでとうございます。とても素敵な作品で、最初の方から休まず一気に読んでしまいました。それに、描写がとても綺麗でもあり、妖艶で惚れました。最高です。 (2019年10月20日 10時) (レス) id: 7837a845b7 (このIDを非表示/違反報告)
Physics(プロフ) - 流れるような描写がすごく綺麗でした!読了後に「色は匂へど散りぬるを」の最初の方を読み返して夢主の成長を感じ、色んな意味で強くなったなあ、なんて思ってしまいました。最後に、素敵な作品をありがとうございました! (2017年5月9日 18時) (レス) id: 28db851a9c (このIDを非表示/違反報告)
きなこもち - 完成おめでとうございます!初めて見たけど面白かったです!! (2017年3月26日 18時) (レス) id: 8a0b328429 (このIDを非表示/違反報告)
碧瀬(プロフ) - とても素敵な作品でした。完結おめでとうございます。 (2017年1月29日 1時) (レス) id: 33020b63e9 (このIDを非表示/違反報告)
呪者 - あぁ!高杉むずかしい!完結おめでとうございます!(^^) (2016年8月24日 10時) (レス) id: e80216b179 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:中村 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/nakamura_/
作成日時:2015年3月23日 23時