第四十三話 ページ45
「おい携帯貸せ。太宰に連絡する」
中也は一層声を低くしてそう云った。その瞳には明確な殺意の色を孕んでいた。Aは携帯電話を取り出すと太宰に電話を掛け、中也に渡す。
呼出音が二人の間に響く。暫くして太宰の気の抜けた声が聞こえた。
『はァい中也。如何したんだい?』
「よく俺が手前に連絡するって分かったな。」
『其れは勿論。アタッシュケースの中身を見た君から連絡が来ることは予想していたよ』
「どういう心算でこの拳銃を俺に渡した?之は宇能が持っていた拳銃だぞ」
その名前を聞いた瞬間、Aの胸でどくりと心臓が鳴った。嗚呼またこれだ、胸がざわつくこの感覚が不快で仕方ない。苦しい。
『中也、君に朗報だ。Aちゃんの事なのだけど、依頼通り身の安全は確保出来そうだよ』
「あ?依頼した覚えはねェよ。俺は探偵社に入れて欲しいと伝えた筈だぞ」
『探偵社に入るまでもない。……君の女だろう。彼女の安全は君の元にいる方が確実に保証出来る。』
「手前、先刻から何云って──」
『もう一度Aちゃんの異能力を発動させよう。君がその拳銃をAちゃんに撃って記憶を呼び戻すんだ』
「は……?」
中也は訳が分からないといった顔をしてAを見詰めた。先程の殺意は感じられず、明らかに動揺していた。拳銃とAを交互に見詰めた中也は「無理だ。俺には出来ねェ」と小さく呟いた。
『良いのかい?彼女の記憶を呼び戻す絶好のチャンスだ』
「俺がAを撃つ?無理だ。それで記憶が戻らなかったら如何する?死んで終わりだ。其れに何処に記憶が戻る根拠があンだよ」
『根拠ならある。然し君が出来ないのなら仕方が無いねえ。……Aちゃん、探偵社に戻っておいで』
「……はい」
Aは素直に頷いて踵を返した。彼女の声に感情は無い。
中也は反射的にAの腕を引き戻そうとしたが、中也の手は届かず宙を掴んだ。振り向き様にAの首に赤く噛みつかれた痕がはっきりと中也の視界に入った。
「おい、どう云う事だよ」
「却説。相棒の為に一肌脱ごうかな」
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椛 - 時間があれば読み返しています!!とても魅力的な作品を読ませていただきました!! (2022年3月23日 22時) (レス) id: 9bee9bd17c (このIDを非表示/違反報告)
はるなか(プロフ) - 梨桜さん» ありがとうございます!格好良さを全面に出したかったので良かったです〜!新作も宜しくお願いします! (2022年1月22日 13時) (レス) id: 379cc49933 (このIDを非表示/違反報告)
はるなか(プロフ) - 引きこもりちゃんさん» 更新の度コメントくださってありがとうございました!また機会があったら読み返してあげてください(〃'▽'〃) (2022年1月22日 13時) (レス) id: 379cc49933 (このIDを非表示/違反報告)
梨桜 - 完結おめでとうございます!最後までクッソ格好よかったですね…新作も楽しみにしています!! (2022年1月22日 10時) (レス) @page50 id: 76e4dc31cc (このIDを非表示/違反報告)
引きこもりちゃん - 完結おめでとうございます!この話凄い好きです。お疲れ様でした。 (2022年1月22日 0時) (レス) @page50 id: 81a3cc2368 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:はるなか | 作成日時:2021年11月26日 22時