第四十一話 ページ43
何かを焼く音がして目を覚ました。食欲を唆る匂いが鼻腔を擽り、この匂いは何だと早朝の気怠い身体を起こす。布団から出ると冷えた空気に襲われ、腕を摩り乍ら台所を覗いた。
「やァ、お早う」
「お早う御座います。……料理、できたんですね」
Aは重い瞼を擦り、フライパンを片手に慣れた手付きで魚を焼く太宰を見上げる。太宰は彼女の言葉に｢焼くだけだからね」と笑った。早朝からこの人は顔が良いな…と心の内にそっと潜めておく。
「腰は痛くないかい？」
「ええ、布団が柔らかかったので」
「其れは良かった。」
太宰は手際良く白米を茶碗に盛り、味噌汁を用意し、お盆に朝食を乗せると居間の卓袱台に運ぶ。
その様子をぼんやりと眺めながらAは昨晩の事を思い出した。
「太宰さん、昨日の夜のことは……」
「嗚呼、済まなかったね。私も呑みすぎていたよ」
「いいえ、私こそ何も知らずに無礼を」
しゅんと肩を落とすAを見て、太宰さんは安心し給えと頭を撫でて呉れた。こんな容姿端麗な人間に頭を撫でられてしまえば普通の女性なら一度で殺されてしまうだろうと他人事のようにAは思う。
向かい合うように座り「頂きます」と両手を合わせ朝食に手を付けた。食器と箸の音だけが狭い空間に鳴り響く。
話す内容が無い訳では無い、昨晩の太宰の言動や行動が余りにも衝撃的でありAは咀嚼するのに精一杯であった。焼き魚の骨を器用に取り分け、身を箸で摘み口に運ぶようにAは昨晩の記憶を辿り丁寧に自分の心の中に落とし込んだ。
暫く続いた無言を太宰が破る。
「そうだ。私の家に居座るのは良いのだけど、少し手伝って欲しい事があってね。どうせ君暇でしょう？」
「う、……ええ、まあ。暇ですけど」
「それじゃあ決定だ。探偵社の仕事を手伝って欲しい」
「推理力も無ければ銃を握ることも出来ませんよ？」
「知ってる。君にしか出来ない仕事なんだ、引き受けてくれるかい？」
太宰は黒瞳でじっとAを見詰める。拒否権は無いと云われているような無言の圧が強い。
Aは苦虫を噛み潰したような顔をして渋々頷いた。
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椛 - 時間があれば読み返しています！！とても魅力的な作品を読ませていただきました！！ (2022年3月23日 22時) (
レス) id: 9bee9bd17c (このIDを非表示/違反報告)
はるなか(プロフ) - 梨桜さん» ありがとうございます！格好良さを全面に出したかったので良かったです〜！新作も宜しくお願いします！ (2022年1月22日 13時) (レス) id: 379cc49933 (このIDを非表示/違反報告)
はるなか(プロフ) - 引きこもりちゃんさん» 更新の度コメントくださってありがとうございました！また機会があったら読み返してあげてください(〃'▽'〃) (2022年1月22日 13時) (レス) id: 379cc49933 (このIDを非表示/違反報告)
梨桜 - 完結おめでとうございます！最後までクッソ格好よかったですね…新作も楽しみにしています！！ (2022年1月22日 10時) (レス) @page50 id: 76e4dc31cc (このIDを非表示/違反報告)
引きこもりちゃん - 完結おめでとうございます!この話凄い好きです。お疲れ様でした。 (2022年1月22日 0時) (レス) @page50 id: 81a3cc2368 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：はるなか | 作成日時：2021年11月26日 22時
