四十三話。 ページ46
Aside
「…Aさん!
もう大丈夫なんですか?」
「はい。
怪我の治りは早いので。まだ少し動きにくいですけれど……。」
「うわああ!!
良かったよぉ!!急に倒れるもんだから吃驚したんだよぉ!?」
完全にはうまく動けないから多少手伝ってもらわないといけない。
それに関して言えば大丈夫ですから、と言われた。
温もりが夢のようですごく暖かくて……。
こんなの贅沢だ。
「…A。
こちらに来てくれるかい?」
「御意。」
お館様に呼ばれ、お側に向かった。
お館様は私に手を伸ばされて、そっと頭を撫でたかと思うと抱き締められた。
お館、様。
「…すまない。
本当に、すまない、A。
もう一度…私の子供でいてくれるかい?」
それは初めてお会いしたときのことを思い出させられた。
『私の子供にならないかい?』
ここお方は確かに、そうおっしゃった。
忘れもしない。
鬼である私を尚も、この方は子供になってほしいと言ってくださった。私にとってはそれで十分だった。
「…勿論です、お館様。
如何なるときも私はあなたの手となり、足となり血となる…。
あなたのお側に、お仕えします。」
もしかしたら、私が受けたものと言うものは世間一般からすれば許しがたいもので私はおかしいのかもしれない。
でも、これでいいの。
私にとっての幸せと言うのはきっと、こういうことだから。
恨んだりしても、私はどうにもならないから。
私はどうしようもないくらいにここの方々が好きなんだ。お優しいかたで、その優しさの矛先が偶々、かわってしまっただけなのも理解している。
「ありがとう、A。」
その時、涙が溢れた。
もう何年も泣いてなどいなかった。どんなことがあっても笑っていた。
私は、声をあげてないた。
お館様は何も言わなかった。
私が泣いている間、誰も何も言わなかった。
「…さて、話し合いの続きをしようか。」
私が泣き止んで落ち着いた頃、そうお館様はいった。
皆さんはまた真剣な顔をしていらっしゃった。お館様の雰囲気が変わられて、いつもはただただ優しい空気なのに、少し怖くなった。
怒っていらっしゃる、のかな。
「私はね、莉々菜。
Aを傷つけたことを許さないよ。
Aがもし、鬼でなかったなら…確実に死んでいたのは確かだ。
私情を交えなくとも他の隊員の被害を考えるとあるべき刑は一つ。」
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アマリス(プロフ) - ハッピーエンドなんて認めない。柱なんて、私の書いた小説のようにバッドエンドになればいいんだよ! (2022年11月22日 12時) (レス) @page44 id: 7d0074fb6d (このIDを非表示/違反報告)
桜井直(なお)(プロフ) - めっちゃ面白かったです! (2022年9月15日 21時) (レス) id: ee464fdcd2 (このIDを非表示/違反報告)
桜井直(なお)(プロフ) - 悪女ーネタバレになるかもしれませんが自分は悪くないって言ってるけどどうみても100パーわるいでしょ (2022年9月15日 21時) (レス) @page48 id: ee464fdcd2 (このIDを非表示/違反報告)
暁月フウリ - こんにちは、初めまして!一気読みしてしまいました。すごく面白かったです!私、裏切りとか嫌われとか好きなんで、めっちゃ好みです。素晴らしい作品をありがとうございました! (2020年9月5日 22時) (レス) id: 4b7d7100c2 (このIDを非表示/違反報告)
ミナミ(プロフ) - 孤紅ちゃんさん» コメントありがとうございます!そうですね…やっぱり、ああいうタイプの人は変わらないと思っているので…これからもよろしくお願いします! (2020年7月18日 13時) (レス) id: 5a0bdf4eea (このIDを非表示/違反報告)
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