十七話。 ページ19
Aside
「儂は留守にする。
あそこにある山に行くといい。霧が濃くて滅多に人が通らない。
日がくれる頃には戻ってくるから、それまでにここに戻ってこい。
家にいたらいつ誰が来るか分からんからな。」
「はい、わかりました。」
鱗滝さんの家に住まわせて貰ってから早三日。今日は留守にされるらしい。
町に食料を買いにいくんだとか。
追われている身の私はついていかない方がいいだろうし、その道中誰に会うかもわからない。
鱗滝さんは朝早くに出ていった。
私はこの三日間、ご飯を作ったり洗濯をしたりとして今日も二人分のお弁当を作った。
鱗滝さんは無口な方だけれど、優しい方だ。
私の身の上を詮索することもなく、私の世話をしてくださる。申し訳ない限りだ。
鱗滝さんに言われた山に入った。
日輪刀とお弁当を持って。
日輪刀を持ったのは鍛練のためだ。ああなってしまった以上、お館様の元には戻れないのは分かっている。
それでも、習慣とは怖いものでいつも通り素振りもよくやっている。
せっかく、教えてくださったのに…私はお役にたてなかった。
お役にたちたいなど、私のようなものが言うのも烏滸がましく思う。
山につくとなるほど、空気が薄い。
そして霧が物凄く濃い。
確かに、これでは人が来ないわけだ。入ったら迷ってしまうだろうし入る気も失せるだろう。
でも、気配を読めば山からは出られる。
迷わずにすみそうだ。
不思議な気配のする山だ。
沢山の人……子供のような気配がする。それもどこかあやふやで…意識してないと消えてしまいそうだ。
歩くと、岩が見えた。
とても大きく、固い岩だ。
でも、誰が切ったのか…真っ二つに割れている。それもきれいに。
鱗滝さんは育手と言っていたし…鱗滝さんの弟子の方だろうか。
「それを切ったのは炭治郎だよ。」
そう考えを巡らせているとき、声がした。
振り返るといつの間にやら女の子がそこに立っていた。
……え。
「…あなた、はどなたですか?」
「私は真菰。
あなたはAちゃんだよね。」
「…ええ。
そうですが何故、ご存じなのですか?」
「ここにいる皆、知ってるよ。
子供たちは沢山いるんだ。
皆、鱗滝さんが大好きなんだよ。」
「…そうなんですね。」
子供たち…この沢山の気配の事だろうか。
鱗滝さんの弟子の方。
「修行するの?
一緒にやるよ。」
真菰、と名乗られた少女はそう言った。
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アマリス(プロフ) - ハッピーエンドなんて認めない。柱なんて、私の書いた小説のようにバッドエンドになればいいんだよ! (2022年11月22日 12時) (レス) @page44 id: 7d0074fb6d (このIDを非表示/違反報告)
桜井直(なお)(プロフ) - めっちゃ面白かったです! (2022年9月15日 21時) (レス) id: ee464fdcd2 (このIDを非表示/違反報告)
桜井直(なお)(プロフ) - 悪女ーネタバレになるかもしれませんが自分は悪くないって言ってるけどどうみても100パーわるいでしょ (2022年9月15日 21時) (レス) @page48 id: ee464fdcd2 (このIDを非表示/違反報告)
暁月フウリ - こんにちは、初めまして!一気読みしてしまいました。すごく面白かったです!私、裏切りとか嫌われとか好きなんで、めっちゃ好みです。素晴らしい作品をありがとうございました! (2020年9月5日 22時) (レス) id: 4b7d7100c2 (このIDを非表示/違反報告)
ミナミ(プロフ) - 孤紅ちゃんさん» コメントありがとうございます!そうですね…やっぱり、ああいうタイプの人は変わらないと思っているので…これからもよろしくお願いします! (2020年7月18日 13時) (レス) id: 5a0bdf4eea (このIDを非表示/違反報告)
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