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カルテ07 ページ8

「はぁ…。」

いつも通り病院に行くと、先生がため息をついていた。

「どうしたんですか?」

純粋な質問だった。

「ん、あぁ…早かったね、どうしたの?」

確かに、今日はいつもより10分くらい早かった。

いや、違うでしょ。

「私はただ担任の話が短かっただけです、先生はどうなんですか、って聞いてるんですよ…。」

「…そうだね。」

いつも以上に疲れた声のような気がする。

「あー…いや、ね。朝のニュース見た?」

朝のニュース?

「病院近くの交通事故の話。あっただろ、外科医が助けたよってやつ。」

あー、そういえばあったなぁ。

昨日の自動車事故。

「その外科医ね、俺。」

「え?」

いや、まじか。

「そのせいで疲れてるんですか?」

「違う…それはそれでいいでしょ?その後なんだよ…。」

その後?

「その日結局遅刻してさ、上司に怒られた。手術あってさ。」

…?

「でも、先生は怪我人を助けたんですよね。何で…?」

「俺は間違ったことをしてたとは思わなかった。だが、俺がしたことは間違っていた。世間一般的に。」

世間一般が何?

怪我人は亡くなられてもよかったってこと?

「それは…違う、違いますよね…?」

「違うと、いいけどな…。」

しばらく沈黙が続いた。

「あぁ、ごめん。暗くしちゃって。」

先生は、笑顔だった。

「緋純先生、それは誰かに言って…?」

「……いや。」

だめだよ、そんなの。

「悪い、今日はすぐ終わらせよう、な?」

…。

緋純先生…。

今日の検査は本当にすぐ、単純に、簡単に、沈黙に、終わった。

「…ありがとう、ございました。」

「うん、じゃあ。」

いつものようにこっちを向いてくれたけど、明らかに元気ではなかった。

…迷ってるのかな。

自分の行いに対して。

本当によかったのか、とか。

いいでしょ…いいはず。

手術に遅れる…充分悪い。

だけど…医者って、目の前の人を見殺しにしていいの…?

…よくわからない。

まだ、私も大人じゃないんだな…。

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作品ジャンル:ミステリー, オリジナル作品
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円香(プロフ) - くまの助さん» 読んでいただきありがとうございます! ジャンル、そうですね…アドバイスありがとうございます。 (2018年8月21日 7時) (レス) id: d1740a14bb (このIDを非表示/違反報告)
くまの助(プロフ) - 気がつけば読み終えていました。ジャンルがファンタジーよりミステリーかな?という印象です (2018年8月20日 21時) (レス) id: 20308b11a1 (このIDを非表示/違反報告)
円香(プロフ) - 吐露@菊秦芳は露を吐くさん» ありがとうございます!病院シリーズは初めてなのでよくわからなかったのですが…そう言ってもらえて少し安心しました(笑) (2018年6月9日 20時) (レス) id: d1740a14bb (このIDを非表示/違反報告)
吐露@菊秦芳は露を吐く(プロフ) - なんだかお話の設定やら病院の雰囲気やらがしっかりしていて読みやすかったです!続きを楽しみにしていますね! (2018年6月9日 20時) (レス) id: 07eaa6a5bc (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:円香 | 作成日時:2018年4月23日 17時

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