夢と遊ぶ、幻を覚える【オリジナル】

カルテ26 ページ27

午前中の仕事を終え、休憩をとる。

窓から相変わらず光がさしこんでいる。

先程若い医師2人の左手の薬指を輝かせた光よりは入ってくる角度がきつかった。

昔からずっと好きなブラックコーヒーが入っているカップを持って鏡の前に行く。

どうりであの子たちが大きくなったわけだ。

髪は伸ばしっぱなしにしてあり、前髪も目にかかるくらいだ。

顔もかつての若さは消えている。

俺も今年で36か…。

麗央くんが26、Aが24…。

あの頃から8年か…。

右腕に残る深い傷は今なお目立つが忘れちゃいけないことだと思っているから隠してはいない。

あの後、一連の事件は医師界で問題になり、マスコミ界で問題になり…その場で桑原の対処にあたった、俺と麗央くん、Aには感謝状が贈られた。

桑原は懲役15年の刑が課され、今は暗い刑務所の中で過ごしているようだ。

たまに見に行ってやるんだが、全くあの性格は変わらず、「暇だなぁ、お前。」と笑われる。

一方、渡坂先生、いや渡坂はおとなしく逮捕され、最高裁で裁かれた。

彼は自分の行いを全て認め、医師の資格と共に人としての資格も失ったようだ。

終身刑に晒され、刑務所で一生を終えることとなる。

予想以上の悪行だった。

やはりたまに様子を見に行くんだが、「よく会おうと思いますね。」とやはり笑われた。

気ままなものだ、受刑者は。

さて…もうすぐ休憩時間が終わる。

院長の仕事もだいぶ慣れてきた。

今日からちょうど5年目だ。

行こう、命を救うために、ここで…!!

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