カルテ12 ページ13
“夢の世界”にAを送り出し、俺は静かな部屋に取り残された。
タイマーは6時間。
Aに点滴を打って、ひとまず俺の仕事は終わった。
1週間Aの脳波を見ながらここにいるだけか…。
楽、ではないな…。
俺はこういうのはあんまり好きじゃない。
寝るわけにはいかないしな。
まぁ、前日の12時間睡眠があるから大丈夫だろう。
6時間経った。
「おはよう、どうだった?」
Aは微妙な顔をしていた。
「悪い夢でも見た?」
「え、まぁ…。」
そういえば、30分だけAの脳波が大きく動いたところがあったな…。
「えっと…両親の夢を見ました…。」
両親、か。
「確かAのお父さんは単身赴任で普段はこちらにはいらっしゃらないんだよね。」
頷くAに俺は似たものを感じた。
幼少期の俺のようだ、と思った。
父親は名のある内科医。
毎日遅くまで働いていて、ほとんど家には帰ってこなかった。
母親は普通の主婦だったが、そのような父親に失望し、次の日の朝まで遊んでいる、なんていうことがよくあった。
そんな中で、俺に妹ができた、という話には少しも驚かなかった。
もちろん、俺との繋がりは母親しかない。
すぐに捨てられ、今はどうしているかなんて分からない。
名前すら怪しいところだ。
そのあと両親は離婚し、俺は父親についていった。
そして今、ここにいる。
おそらくAも、似た系統の夢を見たんだろう。
「そう。辛かった…?」
「…はい。」
やはり、そのようだった。
だけど、一発目がこれだと、この先心配だな…。
仕方ない。
Aは“被験体”、だから…。
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円香(プロフ) - くまの助さん» 読んでいただきありがとうございます! ジャンル、そうですね…アドバイスありがとうございます。 (2018年8月21日 7時) (レス) id: d1740a14bb (このIDを非表示/違反報告)
くまの助(プロフ) - 気がつけば読み終えていました。ジャンルがファンタジーよりミステリーかな?という印象です (2018年8月20日 21時) (レス) id: 20308b11a1 (このIDを非表示/違反報告)
円香(プロフ) - 吐露@菊秦芳は露を吐くさん» ありがとうございます!病院シリーズは初めてなのでよくわからなかったのですが…そう言ってもらえて少し安心しました(笑) (2018年6月9日 20時) (レス) id: d1740a14bb (このIDを非表示/違反報告)
吐露@菊秦芳は露を吐く(プロフ) - なんだかお話の設定やら病院の雰囲気やらがしっかりしていて読みやすかったです!続きを楽しみにしていますね! (2018年6月9日 20時) (レス) id: 07eaa6a5bc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:円香 | 作成日時:2018年4月23日 17時