幼い英智と末っ子 ページ27
英智side
あの日、いつものように体調を崩して入院している僕の元に
蛍「英智くん。久しぶりね」
英智「蛍さん？」
蛍「また入院？」
私とお揃いねなんて微笑む蛍さんが来た。
その姿は儚げで綺麗だった。
蛍「今日はね、英智くんに紹介したい子がいるの」
英智「僕に？」
蛍「ほら、Aちゃん。自己紹介できる？」
蛍さんの後ろからちらりと見えた子は蛍さんと同じ髪色をしていて人見知りなのか蛍さんにしがみついていた。
蛍「ごめんなさいね。人見知りなの」
そう言ってベッド横の椅子に腰をかけ膝にAを乗せた。
蛍「この子は私の娘のAちゃん」
英智「娘さん…ですか？」
蛍「そう。私の娘。少し会えるまで時間はかかったけど私の愛しい娘」
英智「初めまして、Aちゃん。僕は天祥院英智だよ」
ちらりとこちらを見る目は深紅
蛍「英智くんは私の甥っ子だからAちゃんにとっては従兄弟よ」
英智「よろしくね」
それからも度々蛍さんはAを連れて家や入院先に遊びに来てくれた。
いつの間にかAも慣れてくれて、
「英にぃ」
妹のように僕に懐いてくれた。
そんなAにいつしか愛おしいという感情が芽生えていた。
蛍「英智くん、いつもごめんね？」
英智「いいんですよ。Aも本当の妹のようで可愛いし」
蛍「英智くんがそう言ってくれて良かった」
蛍さんの入院期間が長くなるにつれ、Aは天祥院本家で預かる事が多くなった。
英智「A？大丈夫かい？」
「ま、ま」
そこで知ったAの夜になると体調を崩す体質。それは新月が近づくほど重くなり高熱になっていく。
「れ、にぃ、りぃにぃ」
高熱を出すと決まってうわ言で出るこの名前。少し気になり蛍さんに尋ねると前の家の兄弟だと言う。
蛍「ねぇ、英智くん。もし私に何かあったらAを元の家族のもとに返してあげて欲しいの」
英智「え？」
蛍「血の繋がった、あの子を愛してくれている家族より大事なものはないわ」
英智「…僕らじゃダメってこと？」
蛍「私も夫も、英智くんもあの子を本当の家族のように愛してくれてる…
だけどあの子の本当のお兄さんと少し前から手紙でやり取りをするようになって、毎回あの子への心配と愛を読んでいるうちにそう思ったの。
まぁ私が生きてるうちは返さないけどね？笑
これは私のわがままよ」
それから数年後、蛍さんは亡くなり朔間くんがAを迎えに来た。
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作者名：杏 | 作成日時：2023年10月23日 19時
