瀬名VS無表情 【あんスタ】

じゅうはち ページ18

十数年前 椚side


それからしばらく、私の撮影の見学をしていたAだが社長が持ってきた小さな仕事を受けることになった。


子供向け雑誌の懸賞品のモデル。


staff「Aちゃん、今日はこの服で撮ろっか」


無表情で子供らしい顔をした事の無いA。


椚「大丈夫なんでしょうか…」


(心配で撮影に着いてきましたけど見てるこっちがハラハラしますね)


staff「Aちゃん！今日はこのぬいぐるみと一緒に撮るよ〜？ぎゅーってしてあっちのカメラの方向いてね！」



無表情で大きなぬいぐるみをぎゅっとしているA。そんな姿も愛らしい。



椚「かわいい〜…」


(親バカでは無いですがあれだけ私に懐いてくれる子が可愛くないわけが無いです！)


泉「当たり前でしょ」


椚「え、瀬名くん？！」


泉「なに、俺が居たら悪いの？」


椚「いえ、そういう訳ではないですよ！」


泉「この雑誌、俺もゆうくんも出るし、Aの初仕事だから見に来たの」



staff「撮影始めまーす。Aちゃんこっちに視線お願いしまーす！」



撮影が始まり、Aの雰囲気がガラッと変わった。現場がざわついてるのがわかる。



子供らしい笑顔とは言えないが、ぬいぐるみを抱き微笑むあの子は、お人形のように綺麗で美しい。



椚「……きれい」


無意識に言葉が漏れていた。隣にいる瀬名くんも同じことを思っていたのか目が合う。



撮影が終わるとAがこちらに駆け寄ってきた。


泉「A、よく頑張ったねぇ！」


私の所に来る前に瀬名くんが抱きしめてしまった。



泉「Aとっても綺麗だったよ！」


瀬名くんが頭を撫でると感情がなかったあの子が嬉しそうに笑った。


椚「…笑った」


泉「A…かわいい！！！」


Aの笑顔を見たのはこの時が初めてだった。

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