愛しいもの (ページ10)

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Y ページ10

at 楽屋

さっきから聞き耳をたてて、ひっそり笑う隣の肩を叩く。

「太輔、そろそろ支度しな」

F「あ、うん」

チラチラとテーブルの二人を気にする背中を見ながら、俺も腰を上げた。

そんな気になるなら自分も行きゃいいのに。

とりあえず支度に時間かかる二人のうち１人は鏡に向かったし…。

もう１人のちっちゃい方に足を向けた。

「お？みっちゃんお菓子もらったの？」

Ki「うん！これ探してたんだよ～」

ふにゃふにゃ笑う頭に手を乗せると、擽ったそうに目を細める顔に頬が緩む。

「後で食べるの？」

Ki「そ！もったいないじゃん？」

いそいそと鞄にしまう姿に思わず笑いが零れた。

全く年上感のないこの人は、どうしてこんなに構いたくなるのか…。

「そっか。ほら、そろそろ支度しな？」

Ki「ん？あーはいはい」

まだ完全に仕事のスイッチが入ってない、フワフワした空気を纏う背中を軽く叩く。

広い鏡の前…。

わざわざ必要な物を移動して、両端に離れて座る２つの背中。

あまりにも当たり前になった行動に、二人がお互いに気にする素振りもない。

５人の視線が集まってるなんて気づきもしない。

溜め息をこぼしつつ残りの４人を見渡して、ソファに戻った。

年少二人はちゃんと自分達で支度をするし、裕太は宮っちに任せとけばいい。

スマホの画面をスクロールしつつ、今日の夕飯はどうしようかと考える…。

最近太輔が気に入ってる店を、何件か候補としてすぐ予約できるようにブックマークしておく。

みっちゃんと久しぶりに飲みに行こうかと思ってたけど…。

…みっちゃんも誘おうか。

なんて考えも過ったが、俺と太輔のいる食事にツアー中以外まず来ないだろう。

なんで来ないのか、なんて…メンバー内では当たり前になってしまった理由を誰も口にしない。

年下達にとっては、むしろ好都合？なのか？

無駄足と知りつつもみっちゃんが気に入りそうな店も検索して、ふと手を止めた。

…今度にしよう。

それに美味しい店ならあっちのほうが詳しいし…。

Ki「ﾍｯｯ…ぷしっ！…ん～、ｽﾞｽﾞ」
F「ﾊｯ…ｸｼｭ…んぅ～」

あらま…。

S「ふふふ」

2「クク…」

T「みやたぁ」

M「ハイハイ。エアコンちょっと弱くしよっか」

FKi「「ん？？」」

Y「いーから早くしなさい」

FKi「はーい「うーい」

相変わらずどうでもいい所ばっかり似ている二人…。

何とも表現し難いその空気に、踏み込めないと感じるのは俺だけなんだろうか…。