愛しいもの (ページ44)

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F ページ44

at ベッド

汗で貼り付いた髪をそっと払うと、今にも閉じそうな瞳…。

…ちょっとがっつきすぎたかな。

明日は…、仕事だっけ。

北山のスケジュールを思い返して少し過った後悔も、どこか満ち足りた顔から小さく溢れた吐息が吹き消した。

「シャワーする？」

Ki「…ね…る」

「…ん」

クタリと力の抜けた手に、せめてタオルで拭いてあげようとそっと身体を離す…。

Ki「…どこ…い…くの」

緩く捕られた手に、片足だけ下ろしたまま動きを止めた。

眠気と戦うように瞬く瞳に、溢れるまま笑みを向ける。

「タオル取ってくるだけ。すぐ戻るよ」

Ki「……ん」

フワリと頭を撫でれば、甘えを滲ませる瞳…。

また吸い寄せられそうになって、誤魔化すように重なる手を取り指先に唇を押し当てる。

くすぐったそうにほんの少し口角を上げた顔が、あまりにも幼く見えてまた笑いが溢れた。

甘えた北山を見れるのは特権だよな…。

なんて優越感に浸れるこんな瞬間に、いつも胸が甘く疼く。

軽くシャワーを浴びて湿らせたタオルを手に戻れば、既に夢の中にいるその身体を拭っていく。

「ククク…ほんっと起きねーな」

寝起きにイタズラしない限り、寝入りは…まー起きない。

本人すら知らなかった場所に見つけたホクロを、また優越感に浸りながらそっとなぞる。

…こんなんしてるから、俺って眠気が起きないのか？

「ふふ…」

こうして自分しか知らない北山を見るたびに、何年経っても甘い感情が沸き上がる。

さすがに擽ったいのか、もそっと身動ぐ。

触れていた身体から、手のひらを頭に移してそっと撫でれば柔らかい息を吐く…。

ふわふわした髪の感触に、ずっと昔こっそり夜中に何度も触れていた頃を思い出して、ほろ苦い想いが甦った。

「きたーま……すきだよ」

あの頃を真似て、そっと眠る北山の耳元に囁きを贈る…。

サブリミナル効果だっけ…？

「…効果…あったのかな？」

叶わないと思ってた。

仕事ではいくらでも分かるのに、全く北山の心の中が見えなくて…。

どうしてもその心の中を知りたくて、心を手に入れたくて…。

「ねえ…。どーして…応えてくれたの？」

未だに真相は教えてくれない…。

ほんの少しだけ微かに残る不安は、僅かに期待してる自分の中の答えが正解かわからないからだろう。

いつも通り隣に横たわり腕を伸ばせば、変わらずモゾモゾとくっついてくる。

初めて一緒のベッドに眠った時から、ずっと…変わらずに。