愛しいもの (ページ40)

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at お風呂場

無意識無自覚極まりない誘惑から、なんとか無事？にバスタブに身を沈める。

Ki「うぁぁ～…。つかれたぁ～」

浴室に響くダルダルの声につられて、俺も息をはき出して身体の力を抜いてく…。

互い違いに脚を伸ばしても、余裕で納まる大きめのバスタブ。

お風呂好きな北山と、満場一致でこのマンションに決めた理由の一つだった。

…二人で入るのもけっこー気に入ってたりする。

なかなか一緒に入ってくれないけど…。

みやとかたまとかニカとか…。
昔から皆といっつも一緒に入ってるくせに。

…言わないけどね。

「部屋…けっこう片付いたよね」

Ki「あ？あー、ずっとほったらかしてたからなぁ～」

「風邪ひいちゃっても安心だよね」

Ki「いや風邪ひいちゃダメでしょ。んはは」

「あ、そっか」

なんて事ない会話に、ふふっと柔らかく笑う目を閉じて寛ぐ顔に、胸が擽られる…。

こんなにのんびりしてるの…何ヵ月ぶりだろ…。

詰めたスケジュールの谷間…。

満たされてるのに、まだ足りないと感じるのは贅沢なんだろうか…。

…何が足りないのかなんて、分かりきってるけど。

ソファでウダウダする時間も、ベッドでゴロゴロする時間も、お風呂で寛ぐ時間も…

Ki「おーい」

「んー…？」

うん。…もうちょっと…こう…。

Ki「おいってばよ」

「…へ？…わっっ」

Ki「ぁっ…ぶねっ」

いきなりのドアップに驚いて身体を縮めれば、ジャブンっと派手にお湯が跳ねた…。

「びっくりした～……て大丈夫？」

Ki「イテテ…膝打った…。急に動くなよぉ～…」

膝スリスリしながら上目遣いに睨まれても…。

「ご…ごめんね？」

Ki「にやけながら謝るなよ…」

スネた声にさらに口元が緩めば、体育座りでジトリと目を向けて隅っこで縮こまってしまった。

「はは…ごめん。急に近くてびっくりした」

Ki「……わるかったな」

…あ、やべ。

「あー…そうじゃなくって…」

んー…もういいか。

待ってても、もったいないし。

「こっち…おいで？」

戸惑う瞳を無視してそっと引き寄せれば、いつもの野郎クサさはドコヘやら。

腕の中に納まるぎこちない肩をゆっくり撫でる…。

赤くなった首筋に顔を埋めれば、ピクリと揺れる頭に頬がゆるむ…。

甘え下手な甘えん坊に甘えてもらうには…

「こうしたかったんだよね～…」

甘えるのが効果的ってことだよね？

Ki「………おれも」

「…うん」

まったく…。俺ってば今頃気づいたよ。