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at 路上


Ki「わかっ…わかったから!」

抱き込んだ腕の中で、内側から思いっきり押し返す北山に、解かれまいとパーカーをぎゅっと掴んだ。


「わかってない!」


何も伝わってない…。


何度謝っても、足りない。

きっと、ちゃんと伝えないと、北山は俺の非を認めない…。

自分が傷付いてることを…認めない。


Ki「ふ…じがやっ!離…せっ、て!」


腕の中で、離せと喚きもがく北山に、目の奥がツキンと痛んでじわりと視界が霞んだ…。


こんなに強く拒否されたことなんか、1度だってなかった。


…これが、自分が起こした事への代償なんだとしたら

俺は…謝る以外に何をすればいいんだろう…


パーカーを掴んでいた手が、ダラリと落ちた…。


パッと腕から逃れて、街灯の灯りに浮かぶ北山の顔は、ボヤけた視界に滲んで表情がわからなかった。


どんなことがあっても…

北山が別れるって選択肢を取るなんて思ってもいなかった。


ただのケンカだって、思ってた。


「ご…めん…。きた…ま…ごめんなさ…」


だから…離れてかないで…。


Ki「…はぁ…」


またフードを被って下を向く口から零れ落ちた溜め息に唇を噛んだ。



Ki「車…入れてこいよ」


「…ぇ…」


Ki「外で騒ぐなっての」


それだけ言って、小走りに遠ざかる背中…。


「…あ」


漸く頭の中に言葉が届いた。


慌てて飛び付いたドアの足下に転がる、鈍く光る鍵。


謝るだけじゃダメなんだ…。


拾い上げてグッと握りしめた。


急いで地下駐車場に進めば、いつもの定位置がぽっかり空いていた。

『藤ヶ谷専用な』

鍵をもらった次の日には用意されてたスペース…。


『あ、藤ヶ谷勝手に入ってきて大丈夫よ?』


ニコリと会釈するコンシェルジュに軽く頭を下げてエレベーターに乗り込んだ。

指先は無意識に階数ボタンを押す…。


自分の家みたいに…。


静かな廊下を進めば、見慣れた扉がなんか懐かしく感じた。


腰にぶら下がる鍵を使うか、インターホンを押すか少し迷って、そっとドアに手を伸ばした。


抵抗なく開く扉。


ふわりと包む暖かい空気と嗅ぎ慣れた柔らかい香りに、足を踏み入れた。


きちんと揃えて置かれたスリッパ…。


『ほい。フワモコ?ってやつ?』


キレイに手入れされたスリッパに足を通して、廊下をゆっくり進む。

リビングから溢れる明り…。


いつも当たり前のように用意されてた心地よさ…。


無条件で向けられてた優しさを

手放す事の恐さに初めて気づいた。

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設定タグ:キスマイ , 俺足 , 藤北   
作品ジャンル:タレント
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作者名:みつか | 作成日時:2017年9月2日 11時

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