F ページ17
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カチカチとハザードの音だけが響く車の中で、停車したフロントガラス越しの景色に呆然とした…。
無意識にも程があるだろ…。
「はぁぁぁ…」
何してんだろ、俺…。
玉の言葉に頭が真っ白になって、抜け出した後のことは何を話したかどうやって帰ってきたかなんて、ぼんやりとしか覚えてない。
『仕事終わってもみつはひとりで我慢しなきゃいけないの?』
扉の向こうから聞こえた声に、胸がぎゅっと締め付けられた気がした…。
どうして玉はあんなこと言ったんだろう…。
だって…あいつはひとりじゃないだろ?
今日だって、ニカが側にいるんでしょ?
いつだって、沢山の人に好かれてて囲まれてて、楽しそうにしてるじゃないか…。
俺がいようがいまいが、そんなのあいつには…。
「…ばかみたい」
ハッと口から乾いた笑いが零れた。
未だに拘ってる自分に嫌気がさす…。
ステアリングに凭れた身体を起こして、久しぶりに見る見慣れた景色から目を逸らした。
こんなトコ来たって、俺は何も行動を起こせないクセに…。
「…帰ろ」
ハザードを消して、シフトレバーに手をかけた。
正面に戻した視界…。
角に映りこんだ人影に、ピクリと手が止まった。
「…ぁ…」
斜向かいのマンションの角から徐々に近づく、見間違えるはずのないシルエット…。
「…きたや…ま」
思わず零れた声に、ハッと我に返った。
パーカーのフードをすっぽり被っていても間違えるわけない。
ゆっくり歩くその隣には、誰もいなくて1人だった。
つい数時間前まで一緒の現場にいたのに、何故かすごく久しぶりにその姿を見たような、変な感覚が襲って固まった様に動けない…。
周りに脇目をふることなく、まっすぐエントランスに続く階段を上がって、そのまま自動ドアの向こうに消えていく…。
1ミリも動けなかった。
車から飛び出して駆け寄るなんて…、そんなテレビの企画みたいな事なんてできやしなかった。
姿の消えた入口から視線を引き剥がして、今度こそエンジンのスタートボタンを押してシフトレバーをドライブに切りかえる…。
「…情けな…」
自嘲する声が小さく零れた。
こうやって…また、ちょっとずつ遠くなる…。
じわりと滲む目に、スマホの点滅する光が飛び込んだ。
ホルダーから覗く画面表示…。
〔ニカ〕
思いがけない相手からの着信に、コクリと息をのんで震える指先を伸ばした。
「…はい」
『ガヤ?今どこにいんの?』
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作者名:みつか | 作成日時:2017年9月2日 11時