184 『愚者の贈り物』 ページ8
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冨岡が何を言ってるんだ、という視線を向けて来た。Aとしては彼の行動の方が信じられない。まさかこの、──この自分の言うことをそのまま聞いて、それを買おうとするなんて。
「じょ……、冗談、に決まってるだろ。本心でお前に似合うと思った訳じゃ」
「──。そうか。別に良い」
「お、お前ちょっと待てって」
Aには、自分の言動が軽佻浮薄であり、大概は事実と違う真実を言っていることを自覚している。己が言うことを素直に信じられてしまうことは、親しい者を──それこそ不死川実弥や、鋼鐵塚鋳蔵──を除いて本当に微々たるものである。というかそんなの記憶がない。
それぐらいのことなのに。今のは、本当に適当に、そうしただけだった。まさか行動するなんて想像の範囲外過ぎた。
驚愕のせいで上手く言葉にできず、舌先で言葉をもつれさせるAに、冨岡はゆっくり言った。
「適当でも何でも。──お前が選んでくれたものが、俺は良い」
それはあまりにもわかりやす過ぎる言葉で、あっさりとAの脳に浸透した。意味を理解するのに数秒間掛かり、そこから反応をするのに十数秒の時間を要した。
ぼ、と火のように燃え上がるAの顔。これが恥ずかしいという感情か、と脳内で正直悶え抜きながら、「ッあぁクソ！」と叫んで冨岡の手から結い紐をひったくる。
そんな彼女を不思議そうに見ていた冨岡だったが、ぶっきらぼうに言われた「もうちっとマシなの選んでやる」という言葉に僅かに頬を緩めた。それは彼にしては珍しい表情変化で、それでも彼女の近くではよくみられる光景でもあった。
──少女と少年が、仲睦まじそうに(ただしAは認めないだろうが)結い紐を相手に見繕う。
冨岡の「買ってやる」という発言にAは「いらない」と返した。だが彼はそれを頑として受け入れず、結局冨岡には三色の青が一本の紐になっているもの、Aには金と黒を編み込ませたシンプルなものが互いから贈られた。
ちなみにどちらも出費は冨岡。がんばれ冨岡。
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白夜の世界(プロフ) - すみた先生さん» そうですね！いや正にその通り！(笑)剣士は他の鬼殺隊員を嫌っていましたが、あれは同族嫌悪というのも多少入っていたんですね。本人に自覚はないですが。過去を経て人間は変わるのに、今の剣士(？)は記憶がないですから。理解しようもないって話です。 (2021年1月14日 18時) (
レス) id: ad65672360 (このIDを非表示/違反報告)
すみた先生(プロフ) - 白夜の世界さん» 答えていただいてありがとうございます！話が変わりますが、記憶を失った主人公が過去の自分を嫌ってるのって、周りと同じ一般的な感覚を持ったからなんだろうなぁ。とか、周りから見た主人公ってこうだったのかなぁとか勝手に思ってます。更新お疲れ様です！ (2021年1月14日 18時) (レス) id: 16cbe631bd (このIDを非表示/違反報告)
白夜の世界(プロフ) - すみた先生さん» ネタバレになるので嫌だ、という方がいるかもしれませんので誰オチかは答えられません。ですが一つだけ言っておきますと、自分の作品読んで来た方はわかります。大正解、同じパターンです(笑)。 (2021年1月9日 20時) (レス) id: ad65672360 (このIDを非表示/違反報告)
すみた先生(プロフ) - 大っっっ好きです！！(唐突)言葉選びといい情景描写といい最高です！個人的に気になっているのですが、この作品で誰オチとかはありますか？できる範囲でいいので教えたいただきたいです！ (2021年1月9日 20時) (レス) id: 16cbe631bd (このIDを非表示/違反報告)
白夜の世界(プロフ) - 紗夜菜さん» ハイハイもう此処でこうなるんだろ？わかってんだよという展開を覆したい性癖の作者です、どうも(笑)。剣士にとって良かったかはわからないですが、周りの人間とのタイミング的には最悪だったと思いますよ。冨岡とか特に。 (2021年1月8日 21時) (レス) id: ad65672360 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：白夜の世界
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/nisui03101/
作成日時：2020年12月20日 17時
