失くしたものを、ずっと探し続けている。【鬼滅の刃】

201　『自動翻訳』 ページ25

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　どうどうと宥めて落ち着かせると、先程までのヒステリックさが何処に消えたのかという冷静さで「それ、日輪刀じゃねえだろ」と鋼鐵塚は言った。


　事実である。此処に来たのはただ単に頼れる人間がいなかったからという理由だが、せっかく刀鍛冶に会いに来たのだからついでに刀を研いでもらおうと思ったのだ。漆黒の刀は現在鋳蔵に預けている最中。

　刀の重量は一般人では二桁振れないほどに重い。そして鬼殺隊士は全員がその重量を常に左側に携えて行動をしている。勿論人目に付く処では背中に隠したりという例もあるが、やはりほとんどは帯刀したままだろう。



　理由は主に二つある。一つは、いつどういう時に鬼が現れるかわからない為だ。此方は鬼を嗅ぎ分ける術がない。だが鬼は隊服を見るだけで此方のことを鬼殺隊員だとわかってしまう。油断禁物という言葉が常にそばに張り付いて回るのだ。

　二つ。これは前述したことだが、刀は重い。非常に重い。そして鬼殺隊員は常にそれを持って歩いている。故に、刀がある時と刀がない時の重心の取り方では違いが出てしまうのだ。急に自分の重さが変わると、それは戦場で致命的なミスとなり得る。


　故にAは日輪刀を鋳蔵に預け、しかしほとんど同じ重さの刀を彼から借りているという訳だ。しかし何故わかったのか。──そう訊ねると、



「お前バカにしてるだろ」

「してねぇよ……、マジで面倒臭いなお前」

「見ただけで日輪刀かぐらいはわかる。日輪刀何処だ日輪刀」

「体に隠してるワケねぇだろ触んなクソが！ てめえの兄貴に預けてるに決まってるだろうが！」



　女の体だというのに何の躊躇もなく触って来る鋼鐵塚を怒鳴りつける。彼もそれはそうかと思ったらしく、「じゃあ久々にあいつの家寄るわ」と言った。

　親から捨てられたとはいえ、血の繋がった兄弟同士はやはり繋がるものがあるのだろう。




「──おう。じゃあな」

「ああ。またな」

「────」




　じゃあな、と言ったのを、またな、に言い換えられた。


　きっと鋼鐵塚は意識すらしていないだろう。


　ただ、それだけの言葉が少し嬉しくて。



　同時に、少しだけ、寂しくもあった。


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