190 『戦力分析』 ページ14
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そんなAの戸惑いはさておき、冨岡の言っていることは確かに納得のことである。現状彼女が実力的にできることはない。戦闘力──いや、戦闘力では負ける。殺し合いならば生き残る力が強いAの方が勝つかもしれない。とにもかくにも、二人の力の差はそんなものだ。
故にこの状態では有利なのは、冨岡だ──『状態』は。
「自分が此処で大声で叫べば……、もうこの場はそれだけで終わるんだぞ」
あくまで忠告。『状況』としては、第三者がこの場に乱入してきた場合──させた場合、圧倒的にAが有利である。大多数の一般人に囲まれれば、それは力などという問題ではなくこの件は解決する。
Aの本心としても、冨岡に悪いことをさせたくはない。温情がある、ということにはなるのだろう。穏便に済ませられるのならばそれが最良だ。最善の道でもある。ちょうど彼との合同任務であった九重との事件で警察と関わり、その面倒さに気づいたということも多少はあるが。
だが冨岡は──一切彼女の話を聞いていなかったのように、Aの肩を押して地面に倒させた。そして隊服の
頬が強張った。その間にまた一つ。
呼吸が浅くなる。常中はとうに解けていて、Aは躊躇うように唇を噛み、勢いよく息を吸い込んで──、
「ゔ……ッ!? ぐ、ふう、ぅ」
「声は、出すな」
「ふぁ、ふぁけ、ぉえ……っ」
喉奥に硬い指先があたり、反射的にえずく。口の中に、指を突っ込まれた。
人生の中で口内に指を突き込まれるという経験をしたことがないAは──大多数の人間が経験などしない──、先程まで浅かった呼吸を急に深くさせてしまう。だが冨岡の手があるせいで中が乾燥したせいか唾液が普段よりも多く、更に仰向けになっているおかげで唾液が奥になだれ込む。
手で冨岡を、掴む。止めようとしたけれど、空いた片手でまとめて押さえ込まれた。ふざけるなと悪態を吐き出すが、ほとんどが呼吸音と成り代わる。
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白夜の世界(プロフ) - すみた先生さん» そうですね!いや正にその通り!(笑)剣士は他の鬼殺隊員を嫌っていましたが、あれは同族嫌悪というのも多少入っていたんですね。本人に自覚はないですが。過去を経て人間は変わるのに、今の剣士(?)は記憶がないですから。理解しようもないって話です。 (2021年1月14日 18時) (レス) id: ad65672360 (このIDを非表示/違反報告)
すみた先生(プロフ) - 白夜の世界さん» 答えていただいてありがとうございます!話が変わりますが、記憶を失った主人公が過去の自分を嫌ってるのって、周りと同じ一般的な感覚を持ったからなんだろうなぁ。とか、周りから見た主人公ってこうだったのかなぁとか勝手に思ってます。更新お疲れ様です! (2021年1月14日 18時) (レス) id: 16cbe631bd (このIDを非表示/違反報告)
白夜の世界(プロフ) - すみた先生さん» ネタバレになるので嫌だ、という方がいるかもしれませんので誰オチかは答えられません。ですが一つだけ言っておきますと、自分の作品読んで来た方はわかります。大正解、同じパターンです(笑)。 (2021年1月9日 20時) (レス) id: ad65672360 (このIDを非表示/違反報告)
すみた先生(プロフ) - 大っっっ好きです!!(唐突)言葉選びといい情景描写といい最高です!個人的に気になっているのですが、この作品で誰オチとかはありますか?できる範囲でいいので教えたいただきたいです! (2021年1月9日 20時) (レス) id: 16cbe631bd (このIDを非表示/違反報告)
白夜の世界(プロフ) - 紗夜菜さん» ハイハイもう此処でこうなるんだろ?わかってんだよという展開を覆したい性癖の作者です、どうも(笑)。剣士にとって良かったかはわからないですが、周りの人間とのタイミング的には最悪だったと思いますよ。冨岡とか特に。 (2021年1月8日 21時) (レス) id: ad65672360 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:白夜の世界 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/nisui03101/
作成日時:2020年12月20日 17時