【呪術廻戦】 待て、を飲み込んだ。【○○しないと出られない部屋】 弐巻

伊地知潔高　「食べさせ合え」 ページ4

リクエスト。


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「私なんかで本当に申し訳御座いません……」

「伊地知さん落ち着いて！？」



　しずしずと流れるように頭を下げた伊地知さん。流石にそれを止めてかかるも、伊地知さんは完全にカチコチである。そんなに硬直することあるか、と思ったが、今までの私の感覚の方がおかしかったのかもしれない。まあよっぽどのリア充経験がなければ『あーん』なんてやらねーよな。

　ただ私はあまり気にしないタチだし(やる瞬間は恥ずかしくもなるも)、行ったら出られるという至って簡易的な仕組みである。そりゃあキスだったりしたら身構えるが、そうでないならそうでないで大丈夫だだ。



「じゃあ、えーと、ほらなに食べます？」

「な、何でもいいです！ どうぞ浅草さんのお好きに……」

「イヤ、私好き嫌い少ない方なんで……、あと食べるもの、大体子供っぽいし」



　これを食べたい！ っていうはっきりした願望はないけれど、悩んだら大体オムライスとかハンバーグとか、そういうわかりやすいものを選んでしまう──ガキ臭いと言われたら両手を上げて降参する他ない。でも美味しいだろ。

　だから大丈夫です、と笑った私を見て、困った顔をした伊地知さん。このままだと埒が明かなくなるとわかったのだろう──私も彼も人に気遣いをできるタイプの人間である、相手を優先して自分が回らなくなることもたまにある──それじゃあ、と彼は口を開いた。


「そこの、蕎麦で」とおずおず指をさす。蕎麦か、伊地知さんらしい──彼らしい、というものもよくわからないが。



「では私から」

「あっ失礼します……」

「つって伊地知さんの方が年上ですから、そんな畏まらなくても」



　もとい恐れなくても。

　別に私と彼では術式を持っているか否かくらいかの違いはないし、人間としての違いはもっとない──いや脳の構造とか、そういうレベルの話までいったら違うかもしんねぇけどさ。硝子さんもそんなようなことを言っていたし。


　しかし、年下に此処まで敬意をもって接してくれる人間が珍しいのは確かである──今日日敬語を使えない人間が急増している中、『敬語』ではなく『敬意に』念をおいてくれている人は好きだ。少なくとも、好ましい。


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